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神殿へ

 翌朝、

 まだ日も明けきらぬうちに、

 少年たちは追い立てられるように

 オアシスを発つこととなった。

 窮地を救った恩人に対するとは思えぬ

 砂漠の民の態度に、

 少年は困惑の表情を浮かべた。

 踊り子が申し訳なさそうに

 頭を下げる。


「ごめんなさい。

 私のせいだわ。

 私が一緒にいたから」


 苦しげな踊り子の態度が、

 他者の詮索を拒む。

 詐欺師は軽く肩をすくめ、

 オアシスのさらに向こうを見渡した。

 若き王と巫女は

 砂に隠された神殿に向かい、

 すでにオアシスを発っている。


「これからどうする?

 確か巫女は魔物に狙われてるって

 話だったはずだが、

 オレたちの出る幕じゃあなさそうだ」


 踊り子の目が迷いを宿した。

 令嬢は小さく首を傾げる。


「どうして今、

 なのでしょう?」


 少年たちが怪訝そうに

 令嬢を見た。

 令嬢は気にした風もなく

 言葉を続ける。


「詳しいことは存じませんが、

 何かの儀式をして

 火竜王から力を授かるのでしょう?

 どうして今まで

 それをしなかったのでしょう?

 もっと早くしていれば、

 これほど事態が悪化することは

 なかったのでは?」


 踊り子は目を伏せた。


「……しなかったんじゃない。

 できなかったんだと思う。

 失敗は許されないから」


『緋の舞い手』は砂漠の民にとって

 国の守護者たる火竜王と人々を繋ぐ重要な役目だ。

 それが火竜王の加護を得られぬとなれば、

 民は心の拠り所を失う。

 ゆえに若き王は儀式を躊躇ったのだ。

『緋の舞い手』が加護を得る、

 その確証を持たぬゆえに。

 そして昨夜の王の宣言は

 勝算あってのことではなく、

 もはや火竜王の加護なくして

 滅びの運命は免れぬという、

 追い詰められた末の決断なのだろう。

 踊り子は顔を上げ、

 少年にすがるような目を向けた。


「火竜王の祭壇に

 行かせてほしい。

 あの子を、

 助けたいの」


 少年はうなずいて了承を伝える。

 踊り子の顔が安堵に緩んだ。

 詐欺師がかすかに苦い表情を浮かべ、

 令嬢は感情を表に出さぬ

 あいまいな微笑みを浮かべていた。


「行こう」


 少年たちは踊り子の先導で、

 砂漠に埋もれた神殿を目指して

 歩き始めた。

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