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確執

 宴が終わり

 人の気配のなくなった庭で、

 踊り子はぼんやりと佇んでいた。

 巫女装束の娘が踊り子に近付き、

 声を掛ける。


「久しぶりね。

 姉様」


 どこかの痛みに耐えるように

 わずかに顔を歪ませ、

 踊り子は短く答える。


「……ええ」

「今さらなぜ、

 帰ってきたの?」


 冷淡な言葉で

 娘は踊り子を斬りつける。

 そこには肉親への愛情も、

 懐かしさも再会の喜びもない。

 踊り子は無言で、

 寂しげに娘を見た。


「姉様がこの国を出てから、

 何もかもが変わってしまった。

 父様も母様も死んだわ。

 一番困難な時にいなかったくせに、

 この国に足を踏み入れる権利は

 姉様にはないわ!」


 怒りにまなじりを吊り上げ

 娘は踊り子をにらむ。

 踊り子は力なくうなだれた。


「……ごめんなさい」


 消え入るような踊り子の声に

 不快そうに鼻を鳴らし、

 娘は踊り子に背を向けた。


「許されるなんて

 思わないことね。

 明日にはこの国を

 出て行ってもらうわ」

「待って!」


 去ろうと足を踏み出した娘の背に、

 踊り子は顔を上げ声を掛ける。


「『招炎の儀』に、

 あなたは耐えられるの?」

「馬鹿にしないで!」


 娘は振り返り、

 鋭く踊り子をにらみ据えた。


「今の『緋の舞い手』は私よ!

 火竜王の加護を得て、

 私は必ずこの国を取り戻すわ!」


 娘の瞳に

 昏く激しい炎が揺らめく。

 踊り子は言葉を飲みこむように

 口を結んだ。


――私は『不出来な妹』じゃない


 小さくそうつぶやき、

 娘は早足にその場を去った。

 右手で顔を覆い、

 踊り子は重いものを吐き出すように

 深く長い息を吐いた。

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