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祝杯
魔物の群れを退け
オアシスを守ったことは、
砂漠の国に久しく無かった
明るい出来事となった。
祝いの宴が催され、
わずかの酒と
わずかの料理が振る舞われる。
それでも人々は高揚し、
歌い、
踊った。
少年たちもその輪に飲み込まれ、
慣れぬ踊りを披露し、
調子外れの歌を響かせている。
踊り子は独り
その輪から距離を取り、
壁際から人々の様子を眺めていた。
踊り子に声を掛ける者はなく、
人々の態度はなぜか、
踊り子にだけよそよそしいものだった。
宴の熱気が最高潮に達したとき、
若き王は杯を掲げ、
高らかに宣言する。
「我らは明日、
火竜王の祭壇へと赴き、
『招炎の儀』を執り行う!
我が妻は『緋の舞い手』として
火竜王の加護を受け、
魔物どもを焼き尽くす
聖なる炎を授かるであろう!
さすればもはや
魔物どもを討ち滅ぼすこと
疑いもなし!」
おお、と人々がどよめく。
それはやがて期待と興奮の色を帯び、
熱狂となって轟いた。
期待と重圧を一身に浴び、
若き王の隣で
娘はぎこちなく微笑んでいた。




