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砂漠の国
魔物の軍勢が地上に現れ
最初に侵攻を受けたのは、
魔物たちの本拠地がある
『死の谷』に最も近い
砂漠の国であった。
砂漠の国ではいくつかの有力氏族が
合議によって王を選出し、
王となった者は
国の守護者である火竜王の巫女、
『緋の舞い手』を妻として
聖と俗の支配者の座に君臨する。
国土の大半を砂漠に覆われ、
点在するオアシスに
しがみつくように生きる砂漠の民は、
厳しい戒律に従い強固な絆を育む、
精強な民族であった。
しかしその絆も
魔物の軍勢に蹂躙され、
今や若き王も緋の舞い手も
行方知れずとなっている。
主要なオアシスは魔物の手に落ち、
国家としての砂漠の国は
もはや存在していなかった。
焼けるような日差しを避け、
少年たちは日暮れ間近の砂漠を、
ある小さなオアシスを目指して
歩いていた。




