行き先
新王軍から離脱した少年たちは
険しい山岳地帯を南下し、
草の国との国境を目指していた。
山村に轟く凱歌が
少年たちに新王軍の勝利を伝える。
王都攻略は熾烈を極め、
新王自ら矢傷を負いながらも、
魔物の将を討ち取り
玉座を奪還したという。
少年の顔に安堵が浮かんだ。
『予言の勇者』の悪評は
消え去るものではなかったが、
新王が勇者をかばったことで
あからさまな発言は終息しつつあった。
もっともそれは、
新王への称賛に覆われただけであったかもしれない。
「英雄になり損ねちゃったわね」
夜の闇に灯る焚火を囲み、
本気とも冗談とも知れぬ顔で
踊り子がぼやく。
詐欺師は軽く肩をすくめた。
「そんなものになりたかったのか?」
「ちょっとくらい報われてもいいでしょ?
結構がんばったんだから」
不満げに口を尖らせる踊り子に
詐欺師は呆れたように笑った。
薪のパチパチとはぜる音が聞こえる。
「これからどうする?」
踊り子が少年に問う。
少年が口を開いた。
「魔物と戦うことに変わりはない。
侵攻を受けている国は
山の国だけじゃないだろう」
「そういえば」
令嬢がどこか間延びした口調で言った。
「今、
砂漠の国では、
かつて国を治めていた巫女が
魔物の軍勢に追いかけられているとか」
「なんですって!?」
踊り子が驚きを叫び
身を乗り出す。
令嬢は小さく首を傾げた。
「何か?」
踊り子は令嬢から目を逸らす。
「……何でもないわ」
明らかに顔色を悪くした様子の踊り子を見て、
詐欺師が怪訝そうに眉を寄せた。
少年は踊り子に言う。
「もう少し西に行けば
砂漠の国はすぐだ。
魔物に狙われているというなら
助けよう」
踊り子は視線をさまよわせ、
やがて迷いを振り切るように
少年にうなずきを返した。
「では、そのように」
令嬢がそう言い、
行き先は定まった。
詐欺師は密かに
令嬢の様子をじっと伺っていた。




