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決戦前夜

『予言の勇者』の「逃亡」は

 新王軍の兵たちを動揺させていた。

 臆病風に吹かれたと嗤う者、

 勝機なしと嘆く者、

 何かの間違いだと信じぬ者、

 策略の一環と納得する者、

 それぞれが互いに主張し、

 結束が揺らぐ。

 新王は兵たちに呼びかけた。


「『予言の勇者』殿は我が臣にあらず。

 魔物どもに脅かされる

 全ての人々を救わんとする者なり。

 勇者殿はもはやこの国に助力は不要と、

 より困難な状況にある場所へと

 旅立たれた。

 勇者殿は我らを信じたのだ。

 我らは、

 自らの力で国土を取り戻せると」


 おお、と兵たちからどよめきが上がる。

 新王は力強く声を張り上げた。


「我らの剣は必ずや

 魔物どもの心臓を貫くであろう!

 怖れるな!

 栄光は我らの頭上にある!」


 動揺していた兵たちの表情が変わる。

 大気を震わせる歓声が新王を包み、

 瓦解しかけた兵たちの結束は

 より強固なものへと変わった。

 新王の名の許に、

 人々は一つとなったのだ。





「……申し訳ございませぬ」


 天幕に戻った新王に

 朱峰将軍は膝をついて頭を垂れた。

 厳しい表情で新王は答える。


「何を謝る?

 勇者を逃したことか?

 それとも、

 勇者を殺し損ねたことか?」


 朱峰将軍がわずかに身を震わせた。


「……私を慮ってのこととは承知している。

 しかし、彼らは我が恩人であることを

 忘れてはいまいな?

 もしあなたが彼らを殺していたら、

 私はあなたを斬らねばならなかった」


 朱峰将軍は無言で地面を見つめる。

 新王は小さく息を吐いた。


「勇者の力がなくとも、

 我らは勝つ。

 勝たねばならぬ。

 あなたの力が必要なのだ、

 将軍。

 私には、

 あなたの力が」

「はっ!

 この身命に代えましても、

 必ずや陛下を玉座の間へ

 お連れ致します!」


 朱峰将軍がさらに身を低くした。

 ありがとう、と答え、

 新王は将軍に退出を促す。

 一礼し、

 朱峰将軍は天幕を出ていった。

 ため息が漏れぬよう口を堅く結び、

 新王は天を仰いだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 王子…… ヘタレなのに立派に頑張っててまあ…… (涙) でも将軍がこれじゃあ孤独ですね。いつか潰れちゃわないかとおばちゃん心配(親戚面ww) どこかに腹心の部下はいないのかしら……
[良い点] 王子も成長しましたね。良い王様になる事でしょう。まだまだ様々な課題困難はあるにせよ。 [一言] 「英雄と勇者の違いとは?」とかなんとか思ってみたり。 あー、ドラクエ1は魔王を倒して婿入り…
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