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戴冠式

 儀礼用の甲冑を着た騎士が

 聖堂へと続く道の両脇に並ぶ。

 聖堂の周囲には民衆が群れを成し、

 儀式の終わりを待っている。

 聖堂では大司教が

 略式の王冠を王子に与え、

 神の名の許に王権を認めると

 厳かに宣言した。

 王子は神に頭を垂れ、

 山の国の栄光と繁栄に

 身を捧げることを誓う。

 この瞬間、

 山の国に新たな王が誕生した。


「新王陛下、万歳!」


 朱峰将軍の声を合図に、

 聖堂に集う臣下が一斉に

 新王を讃える。

 新王は軽く手を挙げてそれに応え、

 背を伸ばし堂々とした足取りで

 聖堂の扉をくぐり、

 彼を待つ民衆の前に姿を現した。

 地鳴りのような歓呼の声が

 新王を包む。

 充分に皆の感情を集めた上で、

 新王は手で民衆を制した。

 声がピタリと止み、

 人々が新王の言葉を待つ。

 新王はゆっくりと口を開いた。


「我が父である先王は、

 襲い来る魔物の軍勢を前に

 自ら剣を振るい、

 その最期の時まで

 魔物を屠った」


 兵たちの中から

 かすかなすすり泣きが聞こえる。

 新王は言葉を続けた。


「我が母である先王妃は

 虜囚の辱めを拒み、

 自ら毒杯を仰いだ。

 まだ幼い弟妹たちでさえ、

 各々に戦い、

 命を散らした」


 民衆が痛ましげな声を上げる。

 新王が目を閉じた。


「私は生き延びた。

 多くの命を犠牲にして。

 ならばこそ、

 私は誓おう」


 新王は目を開き、

 腰の剣を抜いて天に掲げた。


「必ずやこの国から

 魔物どもを駆逐し、

 都を、

 国土を、

 皆の故郷を取り戻す!

 我を信じよ!

 我が示す道の先にある

 未来を信じよ!

 栄光はすでに

 我らの手の中にある!」


――おおおおぉぉぉーーーー!!!


 新王の言葉に、

 民衆は歓喜の咆哮を以て応える。

 地を踏み鳴らす音は州都を揺らし、

 新王を讃える声が途絶えることなく

 大気を震わせていた。

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