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密議

 城の一室には

 朱峰将軍を始めとして

 山の国の主だった将が集まる。

 即位の儀を翌日に控え、

 蝋燭の灯りに照らされた顔は

 一様に憂いを帯びていた。


「生き延びたのが、

 よりによってあの方とは……」


 将の一人が苦々しく呟く。

 朱峰将軍が咎めるような声を上げた。


「言うな。

 王家が絶えるより遥かに良い」


 しかし、と将は反論する。


「殿下はおおよそ戦いに向かぬ御方。

 兵を率い将をまとめ、

 民の期待に応えるなど

 できるとは思えませぬ」

「言うなと言っている!」


 朱峰将軍は鋭く将を制した。

 将が口をつむぐ。


「……殿下は無能でも非才でもない。

 ただ、お優しいだけだ。

 今が治世であれば、

 民の声に耳を傾ける

 よい王となられたであろうに」


 朱峰将軍が少し目を伏せる。

 その言葉はすなわち、

 王子が乱世の王にふさわしくないと

 認めたようなものだった。

 誰かが小さくため息を吐く。


「『予言の勇者』が

 殿下のことであればな」

「『予言の勇者』は

 殿下をお守り申し上げた

 あの少年との噂もある。

 真偽は定かならぬが、

 これも何かの導きよ。

 うまく使えば

 役に立てられよう」


 朱峰将軍の瞳に冷酷な光が宿る。

 彼にとって少年たちは、

 王子や山の国のための

 有効な駒に過ぎない。

 朱峰将軍は切り替えるように

 声量を上げた。


「民にとって

 王家の血を引く

 という事実は大きい。

『正統』の王は

 我らに必要なものだ。

 我ら自身の正当性のためにな。

 殿下には強い王になっていただく。

 張り子の虎でもよいのだ。

 虎に見えるのならば。

 張り子を本物に見せるは

 我らの働きぞ」


 その場にいる一同が

 一斉にうなずく。

 散会を告げようとした

 朱峰将軍の前に、

 慌てた伝令が姿を現し、

 息を切らしながら

 その場の全員に告げる。

 それは、

 王子が部屋から姿を消した

 という報告だった。

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