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迷い
「い、いったい、どういうことだ?」
王子が戸惑いをつぶやく。
令嬢はどこか間延びした様子で言った。
「あの女の子は
魔物の協力者だった
ということでしょう」
王子が驚きに目を見開く。
「なんだと!?
つまり、
裏切り者ということか!」
「おい」
こぶしを握り怒りを顕わにする王子に、
詐欺師は低い声を向けた。
しかし王子は気付かず、
沸き上がる憤りを思うまま吐き出した。
「えぇい、
たとえ幼い少女とはいえ、
魔物に加担するなど
決して許されることではない!
必ずひっとらえて
火あぶりにでも――」
王子の言葉が途切れる。
詐欺師は王子の襟首をつかんでいた。
「そこまでしとこうぜ。
それ以上しゃべりたいなら、
俺たちはここで
あんたと別れなきゃならん」
迫力に押され
王子が口をつむぐ。
詐欺師が手を離した。
少年はうつむき、
その顔に迷いと悩みが交錯する。
やがて少年は顔を上げ、
「行こう」
そう言って歩き始めた。
向かう先は村ではなく、
岳北州都に続く山道。
少年の背を追い
詐欺師たちもまた、
岳北州へと足を向けた。




