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理由
崖の淵に立ち、
少女は少年たちを振り返る。
そのやせた身体はカタカタと震え、
瞳にはただ恐怖がある。
少年は少女に問うた。
「君は、
あの魔物の仲間なのか!?」
詐欺師が少年の肩を掴み制止する。
しかし少年は言葉を続けた。
「俺たちを誘い出し、
罠に掛けたのか!?
どうして!?」
「おい、よせ!」
詐欺師は少年の肩を強く後ろに引いた。
それでも少年は、
責めるような、
理解できぬような視線で
少女をにらんだ。
「……だって」
少女は胸の前で強く両手を握り、
細く掠れる声で言った。
「……魔物は、
村の人たちよりずっと、
優しかった」
少女が少年たちに背を向ける。
少年たちはハッと息を飲んだ。
「いけない!」
踊り子が叫ぶ。
詐欺師と少年が少女との距離を詰め、
手を伸ばした。
少女は崖から身を躍らせる。
二人の手はわずかに届かず、
空を切った。
少年は蒼白な顔で
崖下を覗き込んだ。
――バサッ
力強い羽ばたきが聞こえ、
鷹人が少女を空中で受け止める。
そしてそのまま、
鷹人は彼方へと姿を消した。
少年は呆然と
鷹人が消えた方向を見つめる。
――恥を知るがいい
鷹人の声が
少年の耳にこだましていた。




