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小さな村
「あれは……?」
岳北州の州都から遥か東、
山間にある小さな集落の外れで、
少年は小さく声を上げた。
少年の視線の先には
やせてみすぼらしい姿の少女が、
どこか落ち着かなげに
辺りを見回している。
声を掛けようとしたか、
王子が無遠慮に進み出た。
少女は王子に気付き、
鋭く息を飲むと、
魔物でも見たかのように
顔を引きつらせて、
脱兎のごとく逃げ去った。
少年たちは呆然と少女を見送る。
王子は情けない顔で
立ち尽くしていたが、
やがて怒りの表情で言った。
「無礼な!
私を何だと思っているのだ!」
王子の憤りは黙殺され、
少年たちは歩みを進める。
しばらく歩くと、
眼下に小さな集落が姿を現した。
皆の顔に安堵が浮かぶ。
「久々に屋根の下で寝られるかな」
詐欺師は軽く背を伸ばし、
表情を緩めた。
足取りは軽くなる。
皆が村へと続く細い山道を降りていく中、
少年はふと足を止め
少女が消えた方向へと視線を向けた。
少女が向かった先は
村のある方角とは少し
違っているようだった。




