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 若者はどこか虚勢を張るように胸を反らし、

 自らを山の国の王子と名乗った。

 王都陥落の折、

 近衛に連れられ

 辛くも魔物の手を逃れた王子は、

 みすぼらしい旅人の姿に身をやつし、

 草原の国へと亡命を企てた。

 しかし追っ手は執拗に迫り、

 遂には家臣をすべて失って、

 国を出ることも叶わず独り、

 廃教会に身を隠していたのだという。

 ここに至るまでの運命の過酷さを

 力説する王子に、

 令嬢は無邪気な微笑みを浮かべて言った。


「つまり、

 国と民を見捨てて

 逃げる途中でいらしたのですね?」


 王子の身体が硬直し、

 滑らかだった口が言葉を止めた。

 詐欺師が「あーあ」と呟き、

 踊り子は王子を同情の目で見る。

 少年は冷ややかに王子を見据えた。

 王子は慌てて弁解を始める。


「わ、私が死ねば

 王家の血は途絶え、

 この国は終わる!

 草原の国に赴き

 援軍を求め、

 大軍を率いて戻るこそ

 我が務めであるぞ!」


 自分の言葉に後押しされ、

 王子が胸を張る。

 詐欺師は皮肉気に口を歪めた。


「草原の国の主力は騎兵だ。

 大半が険しい山岳地帯のこの国に、

 騎兵を連れてきて

 役に立ちますかな?」


 うっ、と呻き、

 王子の顔が引きつる。

 令嬢が軽く首を傾げ、

 思案顔で言った。


「山の国が侵攻を受けてから

 しばらく経ちますけれど、

 他国から援軍が送られた

 というお話は聞いておりません。

 草原の国は山の国のために

 兵を割いてくれるでしょうか?」


 ううっ、とよろめき、

 王子が一歩下がった。

 踊り子があきれ顔で

 腰に手を当てる。


「まだ戦ってる人たちがいるのに

 自分だけ別の国に逃げた王子様を、

 この国の人たちはどう思うでしょうね?」


 うううっ、壁に背を預け、

 王子がうなだれる。

 少年は何の興味もない瞳で

 王子を見遣った。


「俺たちは魔物と戦うために来た。

 逃げると言うなら

 一人で行ってくれ」


 少年は王子に背を向け

 廃教会を出る。

 詐欺師と踊り子が少年に続き、

 令嬢は王子に

 にっこりと微笑みかけた。


「それでは、

 ごきげんよう」


 唖然とする王子を残し、

 令嬢は背を向けて去って行く。

 王子はしばしの逡巡の後、

 少年たちを追って駆けだした。


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