表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/289

 町が間近まで迫った時、

 少年はかすかな笛の音を聞く。

 調べを持たぬ合図のための笛。

 長く尾を引くように、

 高く空に響き、消えた。

 そして、

 それが合図であったかのように、

 遠く地響きが聞こえ始める。

 地響きは徐々に大きさを増し、

 砂煙を巻き上げて町へと迫る。

 魔物の群れが、

 死と絶望を引き連れてやってくる。




 襲撃を告げる鐘が響き、

 町は固く門を閉ざした。

 魔物の群れは

 門をこじ開けるべく殺到する。

 どれほど矢を射かけても、

 魔物の群れの勢いは止まらず、

 血に塗れながら体当たりを繰り返す。

 血走った無数の眼と、

 門を軋ませる大きな音が、

 町の人々を恐怖に陥れた。




 少年は詐欺師が止めるのも聞かず、

 腰の剣を抜き放ち、

 魔物の群れに向かって走る。

 狂気を湛えた魔物の瞳が少年を捉え、

 威嚇の唸り声が上がる。

 少年は速度を緩めず、

 魔物の群れは標的を切り替え、

 少年に襲い掛かった。

 魔物の爪が少年を引き裂かんと迫る。

 魔物の牙が少年を噛み千切らんと近づく。

 しかし少年は爪を、牙を躱し、

 剣の一振りで一体の魔物を屠った。

 魔物の血しぶきが風に踊り、

 戦場を彩る。

 やがて魔物の群れの半数が

 骸となって地面に転がった時、

 少年の耳にかすかな笛の音が聞こえる。




 戦意を失った魔物の群れは、

 少年に背を向け逃げ散った。

 なおも魔物を追おうとする少年の背に、

 詐欺師は声をかける。


「やめとけよ。

 ただの野良だ。

 そんなのどれだけ斬ったって

 キリがねぇだろう」


 逃げる魔物に追いつくのは難しい。

 少年は忌々し気に、

 魔物が逃げた方角を睨んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ