予言
少女がマスターに語ったのは、
古い予言にまつわるものだった。
世界が闇に覆われる時、
光の勇者が現れる。
勇者は三人の従者を従え、
光竜主の加護を得て、
闇を払い世界を救うであろう。
少女の話では、
その予言に謳われる勇者が、
本当に現れたのだという。
勇者は森の国の小さな町を救い、
強欲の町を解き放ち、
つい先日もこの町と隣町の街道に出没する
魔物を退治したのだという。
「本当かい?
じゃあ、もう街道を通っても大丈夫なのかい?」
マスターが身を乗り出し、
少女を問い詰める。
少女は力強く頷き、言った。
「私はそちらからこの町に来たのですよ」
マスターは放心したように息を吐いた。
「勇者様が、現れた」
「予言の勇者はこれから、
山の国へ向かうのだとか。
きっと魔物を打ち滅ぼし、
世界を救ってくださるでしょう」
マスターは高揚した顔でうんうんと頷く。
少女は微笑み、言葉を続けた。
「この話を、皆に伝えていただけませんか?
予言の勇者の出現は、
きっと皆の希望となることでしょう」
「おお、まかせとけ。
ここの客みんなに教えるよ。
勇者様が店に来てくれたら最高だけどな」
少女はわずかに微笑み、
マスターに礼を言うと、
手元のグラスを飲み干した。
その瞳にどこか乾いた光が宿っていることを、
誰にも気づかせないように。




