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 テーブルの上には一輪挿しがあり、

 かわいらしい小さな花が生けてある。


「昨日、あいつが買ってきた。

 たぶん花売りにでも押しつけられたんだろう」


 踊り子は、それがなに? という顔をしている。

 適当に煙に巻かれることを警戒しているようだった。


「それがたぶん、

 あいつの『本当』だよ。

 売りつけられた花を部屋に飾る。

 枯れないように水を換える。

 魔物を殺すと息巻いちゃいるが、

 本来、あいつは

 死ぬだの殺すだのにゃ向いてないのさ」

「……山の国に連れていくのを

 ためらってるってこと?」


 詐欺師は頷き、言葉を続ける。


「魔物が憎いってのは本当だろう。

 だが、殺したいってのは本心かな?

 俺はあいつが、

 本当は何がしたいのか、

 自分でも分かってないんじゃないかと思ってる」


 詐欺師の顔に、

 いつものような人を食った薄笑いはない。

 踊り子は真意を確かめるように詐欺師を見つめる。


「山の国は魔王と戦の真っ最中だ。

 それはつまり、

 あいつの憎しみを正当化する

 最適の場所だってことだ。

 魔物の支配を打ち破り、

 人々を解放する。

 自分の憎しみに正義の仮面をかぶせて、

 あいつは魔物を殺すだろう。

 だがそれは、

 あいつにとって望ましい未来なのか?

 そうやって魔物を滅ぼした先にある未来で、

 あいつは幸せになってるんだろうか?」


 詐欺師の言葉には打算も、企みの影さえなかった。

 踊り子は驚いたように疑問を口にした。


「どうして、そこまで?」


 詐欺師はハッとした顔で踊り子を見上げる。


「そいつは」


 本心を覆い隠すように、

 詐欺師はその顔に笑いを浮かべた。


「オレ様が心の底から善良で慈悲深い、

 真の聖人君子だからに決まってるだろう」

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