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一喝
「お、おい!
しっかりしろ!
しっかり!」
詐欺師の身体を支えながら、
少年は必死に呼びかける。
令嬢が二人に駆け寄り、
少年に声を掛けた。
「手当をします。
地面に寝かせて。
あなたさまは離れてくださいませ」
令嬢の声が届いていないのか、
少年は詐欺師に呼びかけ続ける。
令嬢は大きく息を吸うと、
「どきなさい!」
少年を一喝した。
少年の肩がびくっと震え、
初めてその姿に気付いたように、
少年は令嬢を見る。
「私には癒しの力があります。
彼は必ず助かりますわ。
落ち着いて。
ゆっくりと寝かせて、
少し離れてください」
少年はぎこちなく頷く。
踊り子が商人の護衛からマントを剥がして地面に広げ、
少年は慎重に、
詐欺師をその上に横たえた。
令嬢は詐欺師の傍らに膝をつき、
傷口に手をかざして目を閉じた。
「マナよ。
万物の意味の器よ。
回帰せしめよ。
彼の者の肉体をして、
欠くあらざる姿となせ」
令嬢の手のひらから、
青白い光が詐欺師の傷口へと流れていく。
少年は血の気を失った顔で、
目を瞑り、
ひたすらに神に祈った。




