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噂
都からしばらく西に行った場所に、
小さな町がある。
主要街道から外れ、
目立った産業もない寂れた町。
その町が今、
魔物の群れの襲撃を受けているという。
まだ年若い領主の奮戦により、
襲撃はことごとく失敗に終わっているが、
王は戦略的に価値のないその町の防衛に
戦力を割くことを厭うているという。
魔物がなぜその町を襲うのか、
理由は判然としないが、
援軍が期待できない今、
やがて小さな町は魔物に滅ぼされるだろうと、
噂は憐憫と共にそう伝えていた。
詐欺師から話を聞いた少年は、
少ない荷物を背負いなおすと、
西へ向かって歩き始めた。