弁明
「じょ、冗談ゃねぇ!
こんな、こんなところで、
おれは死にたくねぇよぅ!」
護衛の中で最も年若い男が、
涙目になりながら武器を捨てて逃げ出した。
辺りには残りの五人の護衛が、
ある者は気を失い、
ある者は骨を砕かれて呻いている。
腰を抜かして地面に座り込み、
逃げた男の背に罵詈雑言を浴びせている商人に、
詐欺師はゆっくりと近づき、
しゃがみこんで目線を合わせると、
その首元に短剣を突きつけた。
短い悲鳴を上げ、
商人が沈黙する。
「ずいぶんとアコギな商売やってるじゃないの。
魔物と手を組んで商売を独占か。
うまいこと考えたねぇ。
もうけ放題だ」
商人は両手を上げて敵意がないことを示しながら、
怯えた表情で弁解する。
「仕方なかったんだ!
協力しなきゃ殺されてた!
私だって好きでやってたわけじゃない!
誰だって命は惜しいだろ?
誰だってそうだろう!
悪いこととは知ってたさ!
だけど、じゃあ、
あの場で殺されろって言うのか?
私はただの商人で、
魔物と戦う術なんて持っちゃいない!
そこに生き延びる方法があって、
それを選んだ!
いったい何が悪いっていうんだ!
きっと、いや絶対に、
その状況になれば誰でもそうする!
私だけが責められる謂れはない!
そうだろう?」
詐欺師は面白そうに口の端を歪め、
短剣の腹で商人の頬をぺちぺちと叩いた。
「なるほど。
やらなきゃ殺すと脅されて、
仕方なくやったのか。
そりゃ命は誰でも惜しいよな。
勇者でも英雄でもないあんたに、
魔物に逆らって潔く死ね、
なーんてのは酷な要求だ」
詐欺師の言葉に、
商人は壊れた民芸品のように
何度も頷いてみせる。
詐欺師はとびきり優しい笑顔で、
理解を示すように頷くと、
穏やかに言葉を続けた。
「で、あんた、
いくら儲けた?」
商人はハッと息をのみ、硬直する。
詐欺師はすばやく左手を商人の懐に差し入れ、
小さな袋を取り出した。
商人は慌てて袋に手を伸ばし、
目の前に短剣を突きつけられて手を引いた。
「最初は脅されたんだろう。
だが二回目は?
逃げる機会はなかったかい?
そうじゃないだろ?
あんたは味を占めたんだ。
こんなおいしい商売はないと、
笑いが止まらなかったんだろう?」
詐欺師は袋の口を開き、
中を覗き込むと、
ひゅう、と口笛を吹いた。
「あんたはここまでだ。
きっちり役人に突き出してやるから、
覚悟するんだな」
商人はうなだれ、
がっくりと肩を落とした。
詐欺師は立ち上がり、
少年の方へと視線を向けた。




