はったり
突然目の前で始まった戦闘に、
商人とその護衛たちは慌てふためいていた。
獣人たちの何体かは、
すでに死体となって転がっている。
商人たちは目立たぬように身を縮め、
こっそりと戦場に背を向けた。
「よう。
どこに行くんだい?」
突然かけられた声に、
商人の肩がビクッと震える。
彼らが逃げようとした先には、
薄く笑いを浮かべた詐欺師が立っていた。
護衛たちは商人の前に進み出て武器を構える。
詐欺師は手で短剣を弄びながら言った。
「まがい物の護衛にしちゃ、
なかなか忠義じゃないか。
金払いがいいのかい?
うらやましいねぇ」
護衛のリーダー格と思しき大男が、
大剣を振り上げて威嚇する。
「調子に乗るなよ若造。
こっちは六人いるんだぜ?
死にたくなけりゃそこをどけっ!」
大男は大剣を振り下ろし、
地面の小石を弾き飛ばした。
詐欺師はひょいとそれを避けると、
肩をすくめておどけた表情を作る。
「そこをどけ、じゃあダメだろう。
戦いたくない本音が透けてる。
格上に敵わないと錯覚させるのが、
はったりの醍醐味だろうに」
「どうやら死にたいらしいな」
大男は顔を紅潮させ、
残りの護衛たちも一様に怒りの表情を浮かべた。
詐欺師は酷薄な光を瞳に宿し、
短剣を護衛たちに向ける。
「やめた方がいいと思うが、
やるってんなら止めねぇよ。
だが、
後から泣いたって知らねぇぜ?」




