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炎と踊る
「あのヒゲ、どこいった!」
獣人たちが迫りくる中、
踊り子は怒りと共に叫んだ。
さっきまで目の前にいたはずの詐欺師が、
いつの間にか姿を消している。
踊り子は令嬢に離れた場所に隠れるよう告げると、
早口で呪文を唱え始めた。
「マナよ。
万物の意味の器よ。
変質せしめよ。
土塊をして、
燃え盛る炎の槍となせ」
踊り子が膝をつき、
その手で地面に触れる。
仄かな赤い光が地面を走り、
獣人たちの足に触れた瞬間、
地面から噴き出した炎がその身体を貫いた。
獣の断末魔が響く中、
踊り子は苦々しい表情を浮かべた。
「一度に全部は虫が良すぎか」
三体の獣人が炎の槍を躱し、
踊り子に迫る。
もはや呪文を唱える時間はない。
踊り子は立ち上がり、
腰の鉄扇を手に取ると、
顔の前で広げた。
「お姉さんと踊りたい?
お代は少し、
高くつくわよ?」




