襲撃
剣を抜き放ち、
少年は虎人に向かって駆ける。
周囲にいた人影が少年に気付き、
その行く手を阻む。
人影はみな、
獣の顔をしていた。
獣人の鋭い爪を紙一重で躱し、
少年はすれ違いざまに一人を切り捨てた。
ひっ、と短い悲鳴を上げ、
商人が後ずさる。
絶命し、崩れ落ちる獣人を避け、
少年に左右から別の獣人たちが迫る。
右から熊の爪。
左から山羊の蹄。
しかし彼らはその手が少年に届く前に、
少年の背後から伸びる炎に顔を焼かれた。
熊人と山羊人は顔を押さえて絶叫する。
「突然飛び出さないでよ。
びっくりするでしょう?」
踊り子はそうぼやくと、
無数の蛍火を作り出して戦場を照らした。
虎人が残った獣人たちに向かって叫ぶ。
「魔法使いを殺れ!」
虎人の命に、
獣人たちが一斉に踊り子に向かって走り出した。
少年は虎人との距離を一気に詰めると、
力任せにその剣を叩きつけた。
ガキッという鈍い音が響く。
虎人はその指先から伸びた爪で、
少年の一撃を受け止めていた。
「挨拶もなしか。
礼儀がなっていないな」
「黙れっ!」
余裕を感じさせる虎人の言葉に、
少年は苛立ちをぶつける。
力を込めて押し崩そうとする少年の剣を、
虎人は爪に引っ掛けて右にいなした。
少年の身体が前に泳ぐ。
虎人は少年の腹に膝を入れる。
身を屈め、
呻き声を上げる少年に、
虎人は爪を振り下ろす。
少年は剣を手放し、
辛うじて爪を躱すと、
虎人から距離を取った。
「目的はなんだ?
金が欲しいなら」
「お前の首」
虎人の言葉の終わりを待たず、
少年は答える。
「なるほど。
シンプルだ」
交渉の余地がないことを悟ったか、
虎人は爪を構えた。
少年の瞳はまだ憎しみに満ちていたが、
虎人の蹴りを喰らったことで、
幾分冷静さを取り戻したようだった。
少年は予備の小剣を抜き、
虎人と対峙した。




