神様
酒場を出て、
町の入り口へと向かう一行の前に、
広場を埋め尽くす人の群れが現れる。
町を訪れた時の閑散とした光景との落差に、
少年たちは驚いているようだった。
詐欺師が手近にいた町人を捉まえ、
いったい何事かと訊ねる。
「西から行商が来たんだ。
これを逃せば、
次がいつになるか分からんからな。
みんな必死さ」
町人の話によると、
この町に続く街道に魔物が現れ、
行商人や商隊を頻繁に襲うようになったのだという。
物流は滞り、
魔物から身を守る術を持たない者たちや、
リスクを嫌う者たちの足が遠のく。
その結果もたらされたのは、
物価の急激な上昇と、
経済の急速な悪化だった。
ほとんどの商人はこの町を見限り、
今、この町は、
ある一人の商人に物流の全てを委ねている。
しかし一人で運べる荷の量には限界があり、
品不足は常態化し、
物価も高止まりが続いている。
「あの人は、
この町にとっちゃ神様みたいな人さ。
そりゃ少しばかり値は張るが、
下手すりゃ死んだっておかしくないのに、
わざわざこの町のために物を届けてくれるんだ。
町の人間は皆、
あの人に感謝してるよ」
そう言いながら、
町人の声色は暗い。
先の見えない閉塞感が、
この町に影を落としているのは明らかだった。
詐欺師は礼を言って町人と別れると、
広場の中心で品物を売る商人に目を向けた。
愛想の良い笑顔を振りまきながら、
荷馬車に積まれた品を次々にさばいていく。
荷馬車の周りには六人の武装した、
護衛であろう男女がおり、
商品が盗まれぬよう目を光らせていた。
詐欺師は商人から護衛に視線を移すと、
かすかに眉をひそめ、
そして少年に意見を求めた。
「あれ、どう思う?」
少年は詐欺師がアゴで示した方向に目を遣り、
六人の護衛の姿をじっと見つめて、
詐欺師と同様に眉をひそめた。
「……多分、素人だ。
少なくとも、魔物との実戦経験はない、と思う」
詐欺師は頷くと、
獲物を見定めた狼のように物騒な笑みを浮かべた。
「こいつは、
山の国まで金の心配をしなくてもいいかもなぁ」




