表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/289

神様

 酒場を出て、

 町の入り口へと向かう一行の前に、

 広場を埋め尽くす人の群れが現れる。

 町を訪れた時の閑散とした光景との落差に、

 少年たちは驚いているようだった。

 詐欺師が手近にいた町人を捉まえ、

 いったい何事かと訊ねる。


「西から行商が来たんだ。

 これを逃せば、

 次がいつになるか分からんからな。

 みんな必死さ」


 町人の話によると、

 この町に続く街道に魔物が現れ、

 行商人や商隊を頻繁に襲うようになったのだという。

 物流は滞り、

 魔物から身を守る術を持たない者たちや、

 リスクを嫌う者たちの足が遠のく。

 その結果もたらされたのは、

 物価の急激な上昇と、

 経済の急速な悪化だった。

 ほとんどの商人はこの町を見限り、

 今、この町は、

 ある一人の商人に物流の全てを委ねている。

 しかし一人で運べる荷の量には限界があり、

 品不足は常態化し、

 物価も高止まりが続いている。


「あの人は、

 この町にとっちゃ神様みたいな人さ。

 そりゃ少しばかり値は張るが、

 下手すりゃ死んだっておかしくないのに、

 わざわざこの町のために物を届けてくれるんだ。

 町の人間は皆、

 あの人に感謝してるよ」


 そう言いながら、

 町人の声色は暗い。

 先の見えない閉塞感が、

 この町に影を落としているのは明らかだった。

 詐欺師は礼を言って町人と別れると、

 広場の中心で品物を売る商人に目を向けた。

 愛想の良い笑顔を振りまきながら、

 荷馬車に積まれた品を次々にさばいていく。

 荷馬車の周りには六人の武装した、

 護衛であろう男女がおり、

 商品が盗まれぬよう目を光らせていた。

 詐欺師は商人から護衛に視線を移すと、

 かすかに眉をひそめ、

 そして少年に意見を求めた。


「あれ、どう思う?」


 少年は詐欺師がアゴで示した方向に目を遣り、

 六人の護衛の姿をじっと見つめて、

 詐欺師と同様に眉をひそめた。


「……多分、素人だ。

 少なくとも、魔物との実戦経験はない、と思う」


 詐欺師は頷くと、

 獲物を見定めた狼のように物騒な笑みを浮かべた。


「こいつは、

 山の国まで金の心配をしなくてもいいかもなぁ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ