夢
町を見下ろす丘の上に、
三人の姿がある。
踊り子は首飾りに手を当て、
星を見上げて祈りを捧げている。
町では完全武装の兵士たちが、
町を救った『勇者』を捜している。
「あんたは領主から
謝礼をふんだくると思っていた」
少年が詐欺師に素朴な感想をぶつける。
詐欺師は苦々しい顔で答えた。
「オレ一人ならそうしたがね。
お前さんたちの命と
天秤には掛けらんねぇだろ」
踊り子が不思議そうな顔で訊ねる。
「どうして私たちが
命を狙われるの?」
詐欺師は驚きを顔に表すと、
やや説教めいた口調で言った。
「いいかね?
あの領主様が今一番欲しいのは、
この町の正統な支配者という地位だ。
町を牛耳っていたマフィアを駆逐し、
秩序を取り戻した英雄として
領民から讃えられたいのさ。
旅人がボスを殺してくれたから
便乗してマフィアを制圧しました、
じゃあ誰も尊敬してくれないだろ?」
踊り子はうんざりと息を吐く。
「ボスを殺した私たちを殺して、
手柄を自分のものにしたいってこと?」
詐欺師はよくできました、とばかりに
大げさに頷いた。
「領主は数日中に『ボスを処刑する』だろうぜ。
それまでに真相を知ってるオレ達を殺さなきゃ、
不安で仕方がないんだろうさ」
少年は顔をしかめてつぶやく。
「そんな領主で大丈夫なのか?」
詐欺師は心配しなくていいと、
楽しげに笑った。
「なぜこの町がマフィアなんぞに支配されていたと思う?
都の貴族どもに金をバラまいてたからだよ。
マフィアが解体されて金の流れが止まれば、
マフィアの支配を許していた責任を問う声が必ず起こる。
領主でありながらマフィアを野放しにしたあの樽男は、
生贄としちゃこれ以上ないほどふさわしいだろうさ」
少年たちは領主の館へと視線を向けた。
「あの領主だって、
マフィアから金を受け取ってたんだぜ?
なのに、奴は夢を見たのさ。
マフィアを潰して英雄になった自分。
カジノを手に入れて莫大な富を手に入れた自分。
誰からも敬われ、慕われ、その上金も手に入れる。
そんな不相応な未来を夢見た」
少年の目にかすかな憐みの色が浮かぶ。
詐欺師は淡々と言葉を続けた。
「すべて本人の生き方の結果だ。
夢想家はいつか、
現実と向き合わなきゃならん。
あの領主にとっての『いつか』は、
処刑台の上に引きずりあげられた時だってだけさ」
三人はしばし、
無言で領主の館を見つめていた。
空の星が完全に姿を隠し、
山の端から光が溢れる。
長い夜が明け、
新しい朝が訪れた。




