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口車
詐欺師は丘の上で二人と別れた後、
その足で領主の館に向かった。
そしてマフィアのボスが今日死ぬことを告げると、
今こそが正当な支配を取り戻す好機である、
今を逃せばマフィアは永遠に支配者の顔をし続けるぞ、
その血と高貴な魂にふさわしい地位を取り戻したくないか、
マフィアの前に這いつくばる負け犬として一生を終えるのか、
そう言って領主をそそのかしたのだった。
実際にカジノから火の手が上がったことを知った領主は、
私兵の全てを動員してカジノを急襲した。
ボスを失い規律を失ったマフィアたちは、
抵抗らしい抵抗もできず、
簡単に制圧されたのだった。
樽のように太った男が
人の好い笑顔を浮かべて少年たちに近付く。
「いやはや、
誠に感服致した。
このように年若い少年と、
美しい娘が、
この町にはびこる悪に
立ち向かってくれようとは。
勇者とはまさに
あなたがたのためにある言葉。
どうか我が屋敷に参られよ。
あなたがたの勇気と献身に、
報いたいと思っているのだ」
詐欺師はにこにこと愛想を振りまき、
「もちろん、
お伺いいたします」
と答える。
そして少年たちにそっと近づき、
周囲に気付かれぬよう耳打ちした。
「なるべく早いうちにずらかるぞ。
屋敷に入ったら命はないと思え」




