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炎
護衛を斬り捨て、
踊り子を追って部屋へと入った少年は、
あまりに凄惨な光景に足を止めた。
中年男は炎に包まれながら
未だ死ぬこともできず、
弱々しく命を乞うている。
踊り子はまるで何も感じていないかのように、
無表情に中年男を見つめている。
少年は踊り子に駆け寄り、
肩を掴んで強引に振り向かせた。
「もうよせ!
あなた自身を傷付けるだけだ!」
踊り子は感情のない瞳で
少年をじっと見つめる。
それはまるで、
復讐というものにあるおぞましさを
伝えようとしているようだった。
長いような、
一瞬のような時が過ぎ、
踊り子は右手を払った。
青い炎が消え、
赤い炎が大きく燃え上がる。
そして中年男は、
その影さえ残さずにこの世から消えた。
少年が安堵のため息を吐く。
少年の表情を見つめる踊り子の耳に、
大勢の人間の靴音が聞こえる。




