憎悪
建物のあちこちに火を放ちながら、
踊り子と少年はカジノ内を疾走する。
いたるところで悲鳴と怒号が飛び交い、
状況を把握できない者たちが
右往左往する様子が伝わってくる。
二人は遭遇する黒服たちを叩き伏せながら、
ボスのいるカジノの最奥を目指した。
やがて二人の目の前に、
悪趣味な装飾が施された金の扉が現れる。
踊り子が乱暴に扉を開けると、
ソファに座る太った中年男が驚いた声を上げた。
「な、なんだ貴様ら!
どうやってここまで!」
中年男に近付こうと前に進む少年たちに、
屈強な護衛が立ちふさがる。
「そいつらを始末しろ!」
中年男はそう命令すると、
さらに奥に続く扉の向こうへと姿を消した。
「ここは俺に。
あなたは奴を」
少年は踊り子にそう囁く。
踊り子は頷くと、
奥の扉に向かって走り出した。
護衛が踊り子を阻止しようと腕を伸ばす。
少年は護衛の懐に飛び込むと、
胴を横なぎに払った。
護衛はきわどいタイミングで後方に飛びずさり、
少年の剣を躱す。
踊り子は奥の部屋へと消え、
護衛は血走った眼を少年に向ける。
護衛の腹には浅い裂傷が浮かび、
赤く血がにじんでいた。
ォォオオオオオオオーーーーーー
獣のような咆哮を上げ、
護衛の身体がみるみるうちに異形の姿へと変わる。
そこにいるのは人の姿の名残すらない、
一匹の魔獣だった。
少年の瞳が憎しみに染まり、
少年は口の端を歪めて呟く。
「お前が魔物だというなら、
ためらいがなくていい」
少年は剣を構えなおすと、
魔獣の命を刈り取らんと駆けていった。




