カジノ
カジノの裏手には、
関係者用の出入り口がある。
今、その出入り口の前には
一人のフロアマスターが立ち、
慌ただしく行き来する黒服たちに、
何事かを命令している。
踊り子は躊躇なく、
フロアマスターの正面から
堂々と近づいていった。
少年は唖然としながらも、
踊り子の後をついていく。
踊り子の姿に気付いたフロアマスターが
驚きに目を見開いた。
「てめぇ、よくも」
周囲の黒服たちが異変に気付き、
踊り子と少年を取り囲む。
今にも襲い掛かろうとする黒服たちを制して、
フロアマスターが言った。
「今さら何の用だ?
命乞いでもしに来たか?」
踊り子は答えず、
表情の読めぬ顔でフロアマスターを見つめる。
「無駄だよ。
もう手遅れだ。
お前は俺だけじゃねぇ、
ファミリー全体をコケにしたんだ。
ボスは大層お怒りだぜ。
もう一人も必ず殺せってなぁ」
フロアマスターは醜くゆがんだ笑みを浮かべている。
「そう。
あの子を殺せと命じたのは、
ボスなのね」
踊り子は小さく呟くと、
急に態度を変え、
濡れた瞳をフロアマスターに向けた。
「ねぇ。
私をボスに会わせてくれない?」
踊り子の媚態に、
フロアマスターの表情がより一層、
下卑たものに変わる。
「そ、そんなこと、
できるわけねぇだろう。
だが、
お、俺の女になるってんなら、
考えてやってもいいぜ?」
踊り子はゆっくりとフロアマスターに近付き、
その頬にそっと手を当て、
触れるほどに顔を近づける。
「本当?
それもきっと素敵だけれど」
そして踊り子は、
殺意を込めた冷酷な瞳で、
フロアマスターの眼を覗き込んだ。
「あなたたちを潰すほうがずっと素敵」
フロアマスターの身体が瞬時に炎に包まれ、
人間のものとも思えぬ絶叫が響き渡る。
何が起こったか理解できず、
硬直する黒服たちを横目に、
「行くわよ」
踊り子は少年に声を掛け、
カジノの中へと侵入する。




