意志
誓いを終え、
踊り子は歩きだす。
「どこに行くつもりだよ」
詐欺師が踊り子の背に声を掛ける。
踊り子は足を止め、
振り返らずに言った。
「私、馬鹿だったのね。
私がすべきだったのは、
彼女を檻から出すことじゃなかった。
私がすべきだったのは、
彼女を捕らえる檻を、
叩き壊すことだったのよ」
詐欺師はわずかに顔をしかめ、
「犬死だ。
意味はねぇ」
踊り子の言葉を切り捨てる。
踊り子は背を向けたまま、
穏やかに答えた。
「私は砂漠の女よ。
砂漠の民は友の死を許さない。
相手がマフィアだろうが、
この国の王だろうが、
一人だろうが千人だろうが、
愚か者に等しく報いを与えるのが、
私の義務であり、
意志なのよ」
穏やかな語りの奥に、
冷え冷えと滾る怒りと殺意がある。
少年は沈黙を破り、
踊り子に告げた。
「俺も行こう」
踊り子は振り返り、
厳しい瞳で少年を射抜く。
「話を聞いていなかったの?
生きて帰ることはできないと
あなたの相棒は言っているのよ?」
踊り子の視線を
少年はまっすぐに受け止める。
「死ぬつもりも、
死なせるつもりもない」
踊り子は表情を緩め、
苦笑気味に言った。
「物好きね、あなた」
詐欺師は大きなため息をつき、
面倒そうに頭を掻くと、
「オレぁごめんだぜ。
生き延びる算段も無しに
敵に突っ込むなんざ、
馬鹿のするこった」
そう言って二人を睨んだ。
少年はわずかの間、
詐欺師を見ていたが、
すぐに詐欺師に背を向け、
町へ向かって歩き始めた。
踊り子もまた、
少年に並んで歩き出す。
二人の後ろ姿を見送り、
詐欺師は別の方向に顔を向けた。
少年と踊り子が向かう先にはカジノがあり、
詐欺師の視線の先には領主の館がある。




