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ありがとう

 煌々と明かりが灯る大通りから

 一歩入った路地裏には、

 澱んだ闇がわだかまる。

 踊り子は地面に膝をつき、

 一人の少女を抱き起している。

 少女の身体には

 いたるところに激しい暴行の痕があり、

 顔は腫れ上がって

 本来の容貌を推し量ることもできない。

 少女は薄く目を開け、

 言葉を絞り出す。


「お姉さん。

 私ね、

 今日、

 初めて、

 食べたいって、

 思ったものを、

 食べたよ。

 安物だけど、

 きれいな、

 ガラスの、

 首飾りを、

 買ったよ。

 したいこと、

 しても、

 誰からも、

 怒られなかったよ。

 私、

 今日、

 自由、

 だったよ。

 お姉さん」


 そして少女は、


「ありがとう」


 の言葉を残して、

 その短い一生に幕を下ろした。

 踊り子は唇を強く噛み、

 少女の亡骸を抱きしめる。

 少年と詐欺師は、

 踊り子の背に掛ける言葉もなく、

 立ちつくしていた。


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