夢を見る
闇夜を馬に乗り
黒騎士は並足に草原を進んでいた。
隣には極めて不服そうな顔の
豹頭の獣人が並ぶ。
「手を抜いた挙句に負け
死にかけるなど、
醜態にもほどがあります!」
豹人は先ほどからずっと
この調子で黒騎士に文句を言い続けている。
「四天王の一角を担おうという御方が、
あまりにも情けない!」
黒騎士は左手だけで器用に手綱を操りながら
軽く肩をすくめた。
「仕方なかろう。
楽しくなってしまったのだから」
戦いの中で成長していく少年たちを見るのが
楽しかったのだと黒騎士は言った。
豹人の顔が一段険しさを増す。
「そんな理由で死んだら、
ただのバカです!」
その剣幕に気圧され
黒騎士は小さく「すまん」とつぶやいた。
豹人の怒りは収まる気配がない。
「貴方が本気になれば
あんな連中など物の数ではないというのに!」
「馬鹿を言うな。
そのようなことをしたら
町が吹き飛んでしまうわ」
苦笑いと共に窘める黒騎士から顔を逸らし
豹人は小さな声でぶちぶちとつぶやいている。
星の少ない夜空を見上げ
黒騎士はポツリと言った。
「夢を、見たのよ」
豹人は顔を上げ、
怪訝そうに黒騎士の横顔を見つめた。
黒騎士は独り言のように言葉を続ける。
「あの少年たちの姿に、
私は夢を見たのだ。
血に染まぬ未来。
争いのない世界。
共に在るということが
決して絵空事ではないという
夢をな」
豹人はうつむく。
「……拒んだのは人間です。
我らは手を差し出した」
「だが、
すべての人間に確かめたわけではない」
豹人は小さく首を横に振った。
そのような甘い夢は
見ぬほうが良いと言わんばかりに。
しかし黒騎士は
声に力を込めて言った。
「短い時間だったが、
あの町で私は確信を得た。
良い統治であれば
人は受け入れる。
我らが魔物であるかどうかは
大きな問題ではない」
闇の中に瞬く星をその目に捉える黒騎士の横顔を
半ば呆れた様子で豹人は見つめた。




