表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/289

支配下の町

 詐欺師が少女を背に庇い、

 詐欺師を狙う悪魔を少年は一刀に切り捨てる。

 踊り子の視線が魔獣を灼き、

 令嬢は傀儡を氷に閉ざした。

 詐欺師の風が鳥の獣人を引き裂く。

 勝負は一瞬で着いた。


「奇襲ってのはもう少し

 殺気を抑えてするもんだ」


 詐欺師が口の端を上げる。

 少女が恐怖に震えた様子で

 その場にしゃがみ込んだ。


「大丈夫?

 怖かったでしょう」


 踊り子が少女に駆け寄り、

 その背に手を添える。

 少女はびくりと身体を震わせた。

 踊り子は弾かれたように手を引っ込め、

 怪訝そうな表情を浮かべる。

 少年は少女に言った。


「迷惑を掛けてすまない。

 すぐに出て行くから」

「ち、ちがうんです!」


 少女が上げた大声に

 少年は目を丸くする。

 令嬢がどこか冷たい瞳で

 少女を見据えた。

 少女は目に涙を浮かべながら、

 ぽつり、ぽつりと話し始めた。




 ここは谷の国の国境に近いというだけの、

 何の特徴もない町だった。

 谷の国と草原の国の関係は

 敵対するほど悪くも無ければ

 盛んに交易が行われるほど良好でもない。

 特産品があるわけでもなく、

 旅人に一夜の宿を提供しながら

 周辺の町村との細々とした取引によって

 生計を立てている者が大半の、

 軍事政治経済のいずれの面でも

 重要視されない土地だ。

 魔物の軍勢がこの町を襲った時、

 領主は戦うことなく逃げ去った。

 町の守備兵は一夜にして姿を消し、

 途方に暮れた町の人々は

 襲撃に来た魔物の軍勢に投降した。

 この町が平穏だったのは

 魔物の手が伸びていないからではなく、

 すでに魔物の支配を受け入れたから

 だったのだ。


「さっき魔物のお役人がお店に来て、

 お前のところの客は勇者だって。

 話し掛けて気を引けって、

 言われて……」


 魔物の支配するこの町で

 魔物に逆らえば命はない。

 その恐怖に抗えなかったのだと

 少女はうつむき、

 両手で顔を覆って嗚咽を漏らした。

 かすれた声で


「ごめんなさい」


 と繰り返す彼女の背をさすり、

 踊り子が言った。


「やり方が気に入らないわね」


 少年がうなずき、

 詐欺師がにやりと笑う。


「すでに町を支配してるってんなら、

 居場所は決まってる」


 令嬢は窓の方向を振り返った。


「領主の館」


 少年は静かな怒りを湛え、

 宿の出口へと向かう。

 詐欺師が踊り子と令嬢に目配せし、

 少年を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魔物の支配下にある地域での旅。はてさてどういう物語になりますでしょうか? 不安と期待がないまぜです♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ