平穏の町
国境を越え、
少年たちは草原の国に足を踏み入れた。
監視の兵さえいない国境の砦が
所在なく佇む姿は、
噂に迫真性を与えている。
草原の国は統治能力を失っている、
それは少なくとも辺境においては
真実であるようだった。
夕暮れも間近となり、
少年たちは一つの町に辿り着いた。
装備に統一感のない二人の門衛が
もうすぐ門を閉じるぞと
少年たちを急かす。
少年たちは慌てて門をくぐった。
町の通りには
住人らしき人々が忙しく行き交っている。
まるで平穏な景色に
少年たちは驚きを表した。
この辺境の町に
魔物の手は届いていないようだった。
少年たちの姿を認めた宿の客引きが
にこやかに近づく。
その強引な笑顔に気圧され、
少年たちは宿に引きずり込まれた。
「さて」
宿の一階にある酒場兼食堂で、
少年たちは丸テーブルに座り、
適当な料理を注文する。
少年たち以外に
客はいないようだった。
給仕が去るのを待って、
詐欺師が声を上げた。
「説明してもらう約束だ」
詐欺師の目に鋭い光が宿る。
その目は令嬢に向けられていた。
令嬢は軽く息を吐き、
ゆっくりと口を開き――
「あ、あの」
突如横から掛けられた声に口を閉ざす。
声を掛けてきたのは
少年たちをこの宿に連れてきた
客引きの少女。
どうやら彼女はこの宿の娘のようだった。
「もしかして、
あなたがたは『予言の勇者』様?」
どこかおどおどした様子で
少年たちに問う。
予言の勇者の噂はここにも広まっているのか、
苦笑いを浮かべた少年は、
少女に違和感を覚えて笑いを収める。
少女は、かすかに震えている。
詐欺師は穏やかにほほ笑みながら
立ち上がって少女の耳元に囁く。
「何があった?」
少女がびくりと跳ね、
そしてその目に涙を浮かべて言った。
「ごめんなさい、
勇者さま――」
――ガシャンッ!!
窓を突き破り、
飛び込んできた黒い影が
鋭い爪を鈍く光らせて
少年たちに襲い掛かった。
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