証明
詐欺師と女王が
風の塔から出てきた時、
太陽は山の端に
姿を隠そうとしていた。
周囲を覆う張りつめた空気に
詐欺師は眉をひそめ
その背に女王をかばう。
塔は騎士たちによって囲まれ、
入り口を守る少年たちと
睨み合っていた。
詐欺師が視線を巡らせると、
騎士たちの後方に
将の姿がある。
将は申し訳なさそうに
視線を逸らせた。
騎士たちを留めることができず、
ここまで連れてきてしまったことを
後ろめたく思っているのだろう。
「風の試練の
結果や如何に!」
騎士の一人が鋭く女王に問いを放った。
女王は詐欺師の背から離れ、
堂々と身を晒して問いに答える。
「私は、
風竜王の加護を受けることが
叶わなかった」
騎士たちにどよめきが広がる。
やはりと嘲笑する者、
落胆を顔に表す者、
思案げに腕を組む者。
女王の言葉は
それぞれの立場によって
それぞれに受け取られたようだ。
女王は言葉を続ける。
「だが、
風竜王は我らを見限ったわけではない。
風の賢者はここにいる!」
女王が詐欺師を指し示し、
力強く宣言した。
騎士たちのどよめきは大きさを増し、
驚きと不信の目が詐欺師に集まる。
詐欺師はそれらを
平然と受け止める。
「試練に打ち勝ち、
私は風竜王の加護を得た。
今この時より、
私の言葉、
私の行動こそが
風竜王の意思と
心得ていただきたい」
「偽りを申すな!」
詐欺師の
どこか傲慢で挑発的な態度に
一人の騎士が鋭く怒りの声を上げた。
詐欺師はわずかに口の端を上げる。
騎士は憤りを吐き出すように
大きく身を乗り出した。
「国を捨てて逃げたような輩に、
風竜王が加護を授け給うはずがない!
おおかた試練に失敗したことを隠すための
拙い言い訳であろう!
そのような妄言に騙される我らではない!」
――ヒュッ
騎士の言葉と同時に、
いずこからか放たれた矢が
風を切って詐欺師に迫る。
女王の顔が恐怖に強張った。
しかし詐欺師を貫くはずの矢は
彼の周囲に渦を巻く風に絡めとられ、
そして正確に
矢を放った者へと軌道を変える。
わずかも避ける時間を与えず、
矢は射手の眉間のわずか前でピタリと止まり、
射手は放心したように地面に座り込んだ。
騎士は呆然と射手を見つめる。
「私が真に風の賢者であるか否かは
この国を脅かす魔物を駆逐することで
証してみせよう。
それでよろしいか?」
詐欺師の言葉に
騎士たちは沈黙する。
それを肯定と受け取り、
詐欺師は小さくうなずくと、
無造作に一歩踏み出した。
海を割る如くに
騎士たちは道を空ける。
詐欺師はその道を
堂々と進む。
女王が詐欺師に続き、
その後ろを少年たちが
警戒しながらついて行く。
騎士たちの包囲を抜けた詐欺師たちを、
将が笑顔で迎えた。




