騎士
小さく呻き声をあげて
女王はゆっくりと目を開いた。
隣に座っていた詐欺師が
安堵の微笑みを浮かべる。
「ようやくお目覚めか?」
女王は驚いたように詐欺師を見つめ、
身体を起こした。
石像の風竜王が
二人を見下ろしている。
「私は、
風の賢者には
なれなかったか……」
自らの変化の無さに
女王はうつむき
唇を噛んだ。
詐欺師は石像を見上げる。
「お前さんには
いい加減さが足らないとさ」
女王は怪訝そうな顔を
詐欺師に向けた
詐欺師は女王を見る。
「だから
オレに回ってきた」
詐欺師は肩をすくめる。
女王は驚き、
そして居住まいを正して
詐欺師に向き直った。
「風の賢者殿に
お願い申し上げる。
どうか私に
力を貸してほしい。
今、
風の賢者の力なくして
この国は治まらぬ」
女王は詐欺師に頭を下げる。
その声が少し震えた。
「私を嫌っていてもいい。
守る価値がないと
思われても仕方ない。
心まで預けよと
言えるはずもない。
それでも
この国難を越えるためには
あなたの力が
必要なのです」
詐欺師は
「そんなことを考えていたのか」
と呆れ顔を作ると、
下げたままの女王の頭に手を置き、
髪をくしゃくしゃに乱した。
女王は詐欺師の手を振り払い、
勢いよく頭を上げて
信じられぬものを見るように
詐欺師を見つめる。
詐欺師は真剣な瞳で
女王を見つめ返した。
「そのようなことに
思い悩む必要はない。
私に何かを願う必要もない。
貴女はただ
命じればいい。
私に、
守れ、と」
かつての面影を見て取り、
女王は息を飲んだ。
詐欺師は女王の言葉を待つ。
女王は不安げに胸の前で手を握り、
少しかすれた声で言った。
「私を、守って。
私の騎士よ」
詐欺師は騎士の礼を以て
女王に応えた。
「陛下の
御心のままに」
女王の目から涙がこぼれる。
それを止める術を知らず、
女王は両手で顔を覆った。
詐欺師は女王を抱き寄せ、
「すまなかった」
とつぶやいた。




