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謝罪

 詐欺師が目を覚ました時、

 彼は見知った幾つかの顔に

 囲まれていた。

 闇を嫌うかのように

 無数の明かりが灯り、

 詐欺師は眩しげに目を細めた。

 少年が安堵の息を吐き、

 踊り子が呆れたような目で見下ろす。

 令嬢は内心の読めぬ笑みを浮かべ、

 将は咎めるような視線を向けていた。

 そして、

 詐欺師の傍らには

 女王がいる。

 詐欺師の顔を覗き込む女王の目から、

 大粒の涙がこぼれた。


「おま、えが、

 しん、だ、ら――!」


 もはや言葉にもならぬ声を上げ、

 女王は詐欺師をにらみつける。

 詐欺師はゆっくりと腕を持ち上げ、

 女王の頭に手を置いた。


「……悪かった」


 もはや女王としての体面もなく、

 少女のように女王は泣き続けた。




「失態ですな」


 将が冷たく詐欺師を見下ろす。

 夜は更け、

 皆は自らの天幕に戻り、

 ここにいるのは詐欺師と将だけ。

 詐欺師は将の天幕にいた。


「敵に同情などして

 どうするというのです」

「悪かったと言ったろう。

 反省はしてるさ」


 降参と言いたげに

 詐欺師は両手を挙げた。

 将は小さく鼻を鳴らす。


「刺客は身の証になるものを

 何も持ってはいませんでした。

 覚悟の上、

 ということですな」


 詐欺師が陰鬱そうにうつむく。

 もっとも、

 刺客の正体を将は知っているはずだった。

 こういった事態に備えて

 王室警護隊士に騎士たちを

 監視させていたのだから。


「何者だった?」

「紅爪公の騎士でした。

 ただ、

 今夜の襲撃は公の命令というよりは

 彼らの暴発でしょうな。

 今朝の件がよほど

 気に入らなかったようです」


 女王が村人の請願に応え

 食糧を渡したことは、

 騎士たちの不満と不信を

 大きく後押ししたようだ。

 今回行動を起こしたのは

 紅爪公の臣下であったが、

 それは他の騎士が女王に対し

 二心無きことを証明するものではない。

 刺客の男が言った

『我らに続く者は必ず現れる』

 という予言めいた言葉は、

 早晩成就すると考えるべきだろう。

 詐欺師は小さく肩をすくめた。


「建前にこだわってる場合じゃないな」


 将がうなずきで

 詐欺師の言葉を肯定する。

 もはや女王にとって

 騎士に囲まれていることは

 安全を保障しないどころか、

 命を危うくするばかりだった。

 詐欺師は表情を引き締め

 将に言った。


「夜が明ける前に

 女王を連れてここを抜け出す。

 悪いが後を頼む」


 将があごを撫で


「貧乏くじですなぁ」


 とぼやいた。

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