資質
風の塔への行程の二日目、
一行は早朝から街道を進んでいた。
女王は今日も気丈に背を伸ばし、
軍馬にまたがる。
弱さを見せぬその態度は
少年たちには痛々しく映った。
詐欺師は相変わらず
女王に目を合わせることなく、
将となにやら話をしている。
周囲の値踏みする視線から
少しでも解放されるように、
少年たちは女王の隣に並んだ。
時刻は昼を回り、
一行は決して急ぎ過ぎぬよう
街道を進む。
急げば焦りと受け取られる。
王とその兵は、
常に余裕と威厳を示さねばならぬ。
それは民に
王が王たることを示す儀式であった。
「女王陛下にお願いがございます!」
突如聞こえた声に
兵士たちが色めき立つ。
街道を遮るように
数人の村人が飛び出し、
道の中央に平伏した。
女王の列を遮れば
死罪は免れぬ。
村人に槍を向ける兵士たちを制し、
女王は村人の前に進み出た。
「申してみよ」
馬上から傲然と見下ろす女王に
村人たちは自らの窮状を訴えた。
魔物たちとの戦いのための
度重なる徴税によって、
村はもはや明日の糧もないほどに
困窮している。
どうかわずかでも
食料をめぐんでもらえないか。
そう言う村人たちはやせ細り、
頬はこけ顔色は青白い。
彼らが嘘をついているようには
とても見えなかった。
女王は馬を降り、
村人の手を取る。
「苦労を掛けておるな。
すまぬ」
おお、と村人の目から
涙があふれる。
女王は食糧の一部を
彼らに渡すよう命じた。
命を受けた兵たちが
動揺したような視線を女王に向ける。
女王は重ねて命じた。
兵士たちは
感情を押し込めるように奥歯を噛み、
食糧を村人の前に運ぶ。
村人たちは喜びをあらわにし
何度も礼を言った。
女王は微笑み、
うなずく。
女王を苦い表情で見つめ、
令嬢が小さくつぶやいた。
「それは、
すべきではなかった」
そのつぶやきを聞きつけた詐欺師が
皮肉げに口の端を上げる。
「そう思っている連中が、
向こうにはうじゃうじゃいるだろうぜ」
詐欺師の視線の先には、
不信の目を女王に向ける
無数の騎士たちの姿があった。




