謀略
奸賊討つべし。
正義は我らに在り。
王都の中央広場で
王は満足げに
人々の声を聞いていた。
広場には磔台が組まれ、
一人の男が哀れな姿を晒している。
それは先日
警護隊が山賊を討伐した際の
案内役の男だった。
男の身体には
激しい拷問の跡があり、
今にも息絶えそうに
短く浅い呼吸を繰り返している。
「このような暴挙を
許せるはずもない!
主なる神と風竜王の名において
必ずや報いを与えん!」
王の宣誓に
人々の熱狂が重なる。
王室警護隊長である彼は
王の傍らで青白く震えていた。
山賊討伐から帰還して数日後、
彼が耳にしたのは
信じがたい噂だった。
王家の騎士の襲撃により
山間の小さな村が滅ぼされた――
五爪公家の筆頭、
蒼爪公は王家の非を声高に鳴らし、
人々の憎悪を煽る。
王家は調査を約束し、
王室警護隊は謹慎を命じられた。
そしてさらに数日が経ち、
王家は調査結果を発表した。
すべては蒼爪公の謀略であった、と。
王家の『調査』によれば、
蒼爪公は配下の騎士を使って
街道を通る商人を襲撃させ、
存在しない山賊の噂を広めた上で、
民の請願を装って王家に伝えた。
王家はその請願を信じ、
王国の最精鋭たる
王室警護隊を差し向け、
案内役の男の言葉通りに
山賊の拠点を焼き払った。
しかしその案内役の男は
蒼爪公の間者であり、
山賊の拠点とされた村は
何の罪もない山の民の村であった。
そのことに気付いた王家は
案内役の男を捕らえ、
滅ぼされた村に深く謝罪した上で
蒼爪公の非を鳴らし、
もはや暴虐と傲慢を放置できぬと、
その討伐を高らかに宣言した。
磔にされた男の両脇で
兵士が槍を構える。
王が右手を天に掲げた。
男の身体が恐怖に震える。
王が右手を振り下ろす。
兵士の槍が脇腹から
男の心臓を貫いた。
「話が、違う――」
男の最期の呻き声は
民衆の熱狂にかき消される。
しかしその声は彼の耳に
ひどく鮮明に届いていた。




