違和感
篝火を絶やさぬよう
傍に控えていた男の首を
放たれた矢が正確に射抜く。
男は悲鳴を上げる間もなく倒れた。
続けて放たれた火矢が
家々に降り注ぐ。
風にあおられ
炎はあっという間に
家を、
命を飲み込んでいく。
悲鳴と苦悶の呻きが
呪詛のように響き渡る。
隊士達は村へと踏み込み、
焼け落ちる家から飛び出す者を
作業のように切り捨てていった。
恐怖と絶望に染まった山賊の死体が
恨ましげに彼を見つめる。
他者から奪い、
殺すことを生業としてきた者の末路なら、
自業自得というものなのだろうが、
しかし彼は言い知れぬ違和感を覚えていた。
手応えがなさすぎる。
山賊たちは武器を取ることさえ忘れて、
ただただ混乱の中
為す術なく隊士達に斬られている。
夜襲であることを差し引いても、
多少なり命のやり取りを経験した者が
こうも容易く崩れるものだろうか?
しかしその疑問に答えを見出すより前に
戦いは終わり、
もはやこの場に命ある者は
隊士達と案内役の男だけとなった。
「お見事。
さすがは我が国が誇る
最精鋭の皆様ですな」
案内役のわざとらしい称賛が
彼の中の違和感を補強する。
黒く燃え朽ちた家の残り火が
ちらちらと揺らぎ、
焦げ臭さと死の匂いが充満する夜に、
彼は
何か決定的に間違ってしまったような
漠然とした不安を感じていた。




