勅令
それは奇妙な命令だった。
王族を守る盾である
王室警護隊に下ったのは、
山賊討伐の勅令。
本来は所領を預かる者が
すべき仕事だ。
土地勘のない山奥で
警護隊は山賊の根城を探していた。
すでに日は暮れ、
隊士達の顔にも疲労の色が濃い。
捜索を切り上げるべきか、
そう考え始めた時、
案内役の男が抑えた声で言った。
「……あそこです」
案内役が示す方向には
ひっそりと森に埋もれるような
小さな村がある。
十軒にも満たない家は
粗末な小屋のようで、
獣除けだろうか、
篝火が一つ、
村の入り口付近に焚かれている。
「あれが、
山賊の村なのか?」
戸惑いと共に問う彼に
案内役ははっきりとうなずいた。
「一見すれば普通の山村ですが、
そこに住むのは全員が山賊。
どうかご油断なく、
動く者ことごとく
斬って捨てるがよろしいでしょう」
案内役の言葉に
副長が眉を寄せる。
「捕らえて裁きにかけるべきではないか?
法による罰を与えてこそ、
我が国の威信を
万民に知らしめることができよう」
案内役はわずかに嘲りを含む声で
副長に答えた。
「さすがに王室警護隊の皆様は
品が良くていらっしゃる。
しかし獣の如き凶賊どもを
いちいち裁きにかけていては
追いつかぬが地方の現状でして」
世を知らぬと暗に言われ
副長が黙り込む。
彼は小さく息を吐き、
案内役に了承を伝える。
「寝静まるのを待ち、
火を使うがよろしいでしょう。
凶悪な獣も
炎に巻かれればひとたまりもない」
作戦指揮に口を出す案内役を
内心不快に思いながら、
しかし彼はその意見を容れた。
王室警護隊の本来の任務は
王族を守ること。
山賊討伐で隊士を危険に晒すことは
避けなければならない。
「……始めるぞ」
彼の言葉に
隊士達は一斉にうなずいた。




