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敵か味方か

 賓客用の部屋に通され、

 少年は落ち着かない様子で

 椅子に座っていた。

 令嬢は堂々と背を伸ばし

 ハーブティの香気を楽しんでいる。

 踊り子は閉じ込められることを嫌い、

 夜気を求めて部屋を出ていた。

 賓客と言いながら

 男女の別もなく一部屋をあてがうのは、

 辻褄の合わぬ対応だろう。

 『予言の勇者』一行は、

 決して信用されているわけではないのだ。

 おそらくは監視されている。

 少年たちを一部屋に集めたのは

 監視を容易にするためだろう。

 その割に踊り子が部屋を出るのを許したのだから、

 谷の国は『予言の勇者』一行の扱いを

 迷っているのかもしれない。


 ――コンコン


 不意にドアが叩かれ、

 少年が振り返る。

 令嬢が落ち着いた様子で

「どうぞ」と言った。

 扉を開けて現れたのは

 一人の騎士だった。


「失礼する」


 固く笑みのない表情は、

 用件があまり楽しいものでないことを伝える。

 戸惑いと共に

 少年は騎士を迎えた。


「単刀直入に申し上げる。

 貴殿は本当に『予言の勇者』か?」


 椅子に着くなり

 敵意を隠すこともなく

 騎士はそう切りつけるように言った。

 少年が何か言う前に

 令嬢が答える。


「谷の国の騎士は

 どうやら礼節を知らぬようですね。

 そのような無礼な問いに

 私たちが答える義務はない」


 令嬢の常ならぬ厳しさに

 少年は驚きを現した。

 騎士は不快そうに顔を歪ませる。


「我らは礼節を尽くす相手を選んでいる。

 貴殿らが真に『予言の勇者』であるならば、

 この非礼は謝罪しよう」

「それを証しせよと?」

「そうだ」


 騎士が重々しくうなずく。

 令嬢は冷めた目で騎士を見据えた。


「明日、

 私たちは陛下をお守り申し上げ、

 風の塔に赴く。

 それを見ていただければ

 自ずと答えは出ましょう」

「偽物に陛下を任せるわけにはいかぬ!」


 騎士は殊更に大声を出し、

 机を叩いた。

 令嬢は表情を動かさない。


「今、

 この場で証明せよ。

 さもなくば

 今夜のうちに

 城を出てもらう」


 騎士と令嬢の間を

 張り詰めた空気が覆う。

 少年は声を掛けることもできず、

 視線をさまよわせた。。

 両者はしばらく火花を散らし、

 令嬢は小さく息を吐いた。


「私たちは山の国で新王を助け、

 砂漠の国で巫女を救った。

 しかしそれは、

 新王や巫女個人に

 力を貸したわけではありません」


 騎士の表情がピクリと動いた。

 令嬢は柔らかい笑みを形作る。


「『予言の勇者』は魔物を討つ者。

 私たちにそれ以上の意味はございませぬ。

 魔物を討つために私たちは、

 その国の玉座にある方と

 協力関係を結ぶ。

 そこに誰が座っているのかは

 問題ではない」


 騎士は思わずといった風情で

 身を乗り出した。


「その言葉、

 偽りではあるまいな?」

「お答えする必要も無き事」


 騎士は令嬢の目を見つめる。

 令嬢は泰然と微笑んでいた。

 騎士は姿勢を正し、

 令嬢に深く頭を下げた。


「数々の非礼、

 深くお詫び申し上げる。

 あなた方こそ

 真に『予言の勇者』であった。

 どうぞ我らに

 ご助力を賜りたい」


 令嬢は鷹揚にうなずく。

 騎士は満足げに席を立ち、

 部屋を出て行った。

 騎士の態度の豹変ぶりに

 少年は目を白黒させ、

 騎士の消えた扉を

 呆然と見つめた。

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