100/289
昔の話
荷馬車に乗せられ、
少年たちは谷の国の王都への途上にある。
詐欺師は縄を打たれたままだ。
将は詐欺師がおとなしく連行されるなど
露ほども信じていないらしい。
縄を外そうともがきつつ、
詐欺師は少年たちに言った。
「付き合わなくても
いいんだぜ?」
少年は軽く首を横に振る。
「どうせ王都に向かっていた。
女王陛下に許可をもらえば
動きやすくなるだろう」
詐欺師は小さく鼻を鳴らした。
踊り子がどこか信じられない様子で言う。
「あんたが騎士だったなんて、
想像もしなかったわ」
令嬢が首を傾げる。
「谷の国では
どなたでも騎士になれるのでしょうか?」
「やかましいわ」
なかなかの言われように
詐欺師は二人に睨んだ。
そして詐欺師は空を見上げる。
「……昔の話さ」
その声音はそれ以上の詮索を拒み、
踊り子と令嬢は口を閉ざした。




