道連れ
遠く山の端が白く輝き、
夜明けが近いことを告げている。
少年と詐欺師は、
西へ向かう街道を歩いていた。
少年は釈然としない面持ちで、
詐欺師を睨んでいる。
その視線に苦笑して、
詐欺師は口を開いた。
「あいつは実力以上に自分を大きく見せたがる小者だが、
そう悪い領主じゃあない。
もしオレたちがあいつを殺すなり追放するなりしたとして、
次に来る領主がクズじゃないとどうして言える?
オレたちが領主になれるわけじゃないんだ。
せいぜいしっかり反省してもらうくらいが、
オレたちのできる限界なのさ」
少年は複雑な表情を浮かべ、
そして全く別の言葉を口にした。
「どうして笛のことを知っていた?」
詐欺師は視線を逸らし、
やや早口でまくしたてる。
「偶然、本当に偶然に、
禁制品の販売リストを手に入れたのさ。
『狂魔の笛』なんてヤバいものが
悪用されたら大変だろう?
使い道を確かめに、
この町には行かなきゃならんと
ずっと前から思ってたのさ」
白けた表情の少年に、
詐欺師はあわてて話題を変える。
「あの領主に限らないぜ。
もう世界は、
魔物の存在を織り込み済みで回ってる。
魔物を利用して利益を上げ、
魔物を利用して邪魔者を蹴落とす。
魔物は『万人の敵』じゃないのさ。
お前さんが魔物を殺す時、
それを良く思わない誰かが
お前さんの背中を狙ってる」
さっきも殺されかけただろう、と言いたげに、
詐欺師は意地の悪い笑みを浮かべた。
「オレが役に立つと言った意味が分かったかい?
世間知らずの勇者様。
オレはお前さんが知る必要のないことを知っていて、
お前さんがする必要のないことをすることができるのさ。
お前さんが目的を遂げたいなら、
背中を守る相棒が必要だ」
少年は立ち止まり、
しばし考えて、
無言で再び歩き始めた。
詐欺師の脇を通り過ぎ、
次の町へ。
「お、おい。
返事は?
なあ、
おいっ!」
詐欺師は慌てて少年を追いかけていった。




