5話 アドバイス
ちーちゃんの可愛さに心を奪われてしまうのは無理のないことだ。こんなに可愛い女の子は2人といない、野之道さんの主張は大仰ではあるが仕方ないのである。
ちーちゃんは少々どころか思い切り嫌そうだが、ちーちゃんを好いてくれている野之道さんを蔑ろにしたくない。ちーちゃんと仲良くなってもらうためにも、先駆者である僕がアドバイスしてあげないと。
「野之道さん、気持ちは分かるんだけど、ちーちゃんと仲良くなるならもうちょっと落ち着かないとダメだよ」
「ふむ、と言いますと?」
頭に疑問符を浮かべる野之道さんへ説明を試みる僕。
チラリと隣を見ると、『急にどうしたあんさん』と言わんばかりに不満気な視線をちーちゃんが送ってきていた。あらら、野之道さんの第一印象がそんなに良くなかったんだろうか。
だけど僕は説明をやめない。同じクラスにちーちゃんと友達になってくれる人がいるのは本当に心強いし。
「ちーちゃんは人見知りが激しいから、いきなり今日会ったばかりのクラスメートにグッと来られるとびっくりしちゃうよ。ちーちゃんのテンポに合わせてゆっくり話さないと」
「成る程、千雪さんへの愛情が深いばかりに招いた事故ということですわね。反省しますわ。千雪さん、怖がらせてたならごめんなさい」
深く頭を下げる野之道さんだが、ちーちゃんはツンとするだけで返答はしなかった。
ツンとしてるちーちゃんも可愛い……じゃなかった。ここは流石に野之道さんのフォローに入らなくては。
「ちーちゃん、野之道さんも反省してるみたいだし、これから仲良くできないかな?」
「……」
ちーちゃんは申し訳なさそうに眉を垂れさせる野之道さんを見た後、僕の方へ視線を向けた。困惑と怒りが混じったなんとも言えない表情を浮かべていた。
「……朋矢はいいの?」
残念ながら、その言葉だけでちーちゃんの意を汲み取ることはできなかった。続くちーちゃんの言葉を待っていると、ちーちゃんの瞳がじんわりと潤んでいた。