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始まり
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朝ぼらけの霞の中、トリーは、道中を駆けた。
馬の蹄の音がする。
朝刊を配る青年の姿が見える。
お姉さんのお風呂も、お父さんの一服も、
朝の早い時間に済ませられる。
トリーは10歳。
まだ小学生だ。
駆けることを覚えたての、スポーツ好きの少年。
魔法に目覚めるには、少し早い。
魔術師ガーニの実験室では、今日も朝から研究がされている。
熱い試験管に、何やら怪しげな、液体を流している。
ヘリウムガスのような、声を変える薬らしい。
トリー君、これを飲んでみたまえ。
やです、先生。これ声が変わってしまいます。
大丈夫。3、40分で元の声に戻るだろう。
嫌々ながら、トリーは声変わりの薬を飲んだ。
すると、
先生。
大成功じゃー。
声の変わったトリーとガーニは、笑った。