私が隠した
「若葉、一緒に帰ろう?」
口をついて出たのは、そんな俗な言葉。
再会を願っていた、待ち望んでいた、
それにしては、簡素なものだろう。
でも。
この言葉で通じる。
そんな確信があった。
幼い頃から、一緒に過ごしてきて、
片時も離れたことない私達だから、通じ合える。
現に、若葉は。
「うん。」
ひらがな二文字の返答。
この真意も奏と同じものだ。
この言葉で通じる。
余計な言葉は、私たちの間にはいらない。
それを暗に示している。
私達の再会の瞬間も、非常に単純で明快だった。
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大悟と若葉、二人で廊下を歩く。
一人で歩くと、怖い廊下も二人で歩いていると怖くない。
その人が、さっき会ったばかりの人でも。
人間一人分の面積に対して、人間二人分の面積。
その面積が、移動する。
受ける空気抵抗が、大きくなる。
その抵抗の大きさが、また安心をもたらす。
案外心地いいものだと思う。
「こんな暗いところを、本当に君一人で来たのか?」
歩きながら、大悟が疑問を提示していく。
この場所での、若葉。
まだ多少の疑問。
疑惑があるのだろう。
でも、間違いはない。
本当に一人で来た。
そうこうしているうちに、少し前まで見張りがいた場所まで戻ってくる。
相変わらず、人気はない。
その人気の無さの間から、懐かしい声が聞こえてくる。
奏。
お姉ちゃんの声。
一刻も早く会いたい。
そして、謝りたい。
その間にも、大悟の疑問は続く。
この質問は、しなかった方が良かったのだろう。
余計なことまで、聞かなくて済んだ。
そのはずだった。
「さっきから、人気もないし、見張りもいないんだよね?」
「どうしたんだろう?」
空気が質量を増して、襲い掛かってくる。
「私が、隠した。」
次回は、どう展開していくか未定です。
本当の終わりは、もう近そうです。
読んでいただきありがとうございました。




