一種の退行現象
「何処だ、、何処にいる!」
大悟は既に突き当り。
この位置なら、すぐに対応できる。
そして、章ははるか後方から追いかけてきている。
そのはずだった。
何もなかったはずだ。
目を離したのは、ほんの数秒間。
その間だけだ。
そう遠くへ行けるとも思えないし、
行かないだろう。
あの場で俺を見逃すどおりがない。
目撃者は消す。
その執念が、はっきりと伝わっている。
付近にあるものは、窓。
中庭が見渡せる。
廊下には、左右を分ける線が引かれており、通行区分をしている。
窓の反対側には、扉が並んでいる。
一部屋に二つの扉。
至極一般的なもの。
ここで一つの可能性が、思い浮かぶ。
章は見えない。
この廊下には。
だが、この突き当りに接近する方法はある。
二つの扉を経由していけばいい。
単純だ。
いいのだろうか?
誘導されてはいまいか?
嵌められているんじゃないのか?
あの扉を開けた瞬間、すべてが終わる。
隠れていた章に至近距離から、ナイフの一撃。
急所を直撃し、転倒する。
馬乗りになり、ナイフを一心不乱に振るう章。
やがて、生命は損なわれ、死に至る。
一瞬で、ここまでのビジョンが組みあがった。
死へ向かうとは、まさにこのこと。
もう行動は決まった。
相手の出方を見る。
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章は、大悟の想定とは違う行動をとっていた。
大悟は、あのままだと動かないだろう。
どちらかが攻撃に転じないと。
あのまま直進しても、逃げられる。
方法は一つ。
違う階を経由して、あの突き当りに行く。
そうすれば、簡単に背後を取れる。
視線に注意しながら、接近。
死角から、急所に一撃。
仕留めそこなったら、また一撃。
それを繰り返す。
動かなくなるまで。
家族の問題を邪魔する者の末路に相応しいだろう。
「刈り取ってやる、、、、、」
この時の章は、現状として、正常の判断が出来ないでいた。
やっていいことと、悪いことの区別が出来ない。
一種の退行現象といっていいかもしれない。
止めてくれる人間がいれば、止まる。
そんな状態。
その間になり得る人間なんてものがいたのだろうか?
いわば、仲介者。
そう、若葉だった。
「リーダー、、、?」
「リーダー、、無事だったんですね!」
「へぇ、、この人が例の、、、」
この状態の章に最初に話しかけた人間、それが若葉。
そして、この状況。
大悟を追跡する最中、他のメンバーと合流してしまった。
そして、その瞬間、それは鳴りを潜めた。
心の内側、裏側に深く沈み込み、
一時的に白くなった。
合流ですが、その前にあんなことがあったとは、、、。
そんなお話。
次回もよろしくお願いします。
読んでいただきありがとうございました。




