作戦
教師から配られた授業参観に関するプリント。
この施設に外部からの人間がやってくる。
それに先駆けて、俺はメールを送った。
ホームページにあった一樹の父親のアドレスに。
引っかかってくれるかどうかは分からない。
だから、大宮大悟の名前を使った。
時間的に何か動きがあってもおかしくない。
どうだ?
何か変わったことは。
窓から外を眺める。
外には見慣れない人たちがたむろしていた。
その人たちの足取りは、一直線にこの建物に向かっている。
観察する。
人数はまだ少ない。
今、一人入って、もう一人が入り口に差し掛かっている。
入った。
その後ろに、明らかに違う挙動をしているものがいた。
男が一人、女が二人。
校門の前で様子をうかがっている。
何だ、あいつら。
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いや。
見覚えがある。
先頭にいる男。
あいつは。
九重章じゃないか。
距離は遠いが、あのホームページに載っていた人物だ。
見間違えではない。
本当に来てくれたのか。
あのメールで。
だとしたら、こちらも何かアプローチをしないと。
周りを確認する。
黒板に文字を書いている教師。
ただ虚ろな表情で机を見つめている一樹。
教室の入り口近くの机には弓子。
そして、教室の後方。
一樹の母親の姿をした研究員。
不確定要素が多い。
しばらく待つか?
「どうした?そんなにキョロキョロして。」
後方にいる研究員から声がかかる。
授業を続けている教師はこちらを注意する様子はない。
「、、、いえ、少しお腹が痛くなって、、、、。」
「なら、勝手に行けばいい。」
「え、、?」
「、、、、、」
教師の方を見る。
ただ一心に黒板に書き連ねている。
やはり、こちらには関心がないと見える。
なら。
席を立つ。
誰も不審に思ってないのか?
授業中だぞ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
唯一、こちらを見る視線が。
弓子だ。
一緒に真実を求める会に入った。
じっと見る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
伝われ!
どうだ?
弓子の表情は変わらない。
だが、次の瞬間。
笑みを浮かべた。
力強い表情。
この場は任せろと言わんばかりの。
決断は固まった。
他の生徒が、こちらを見ずに沈まりかえっている中。
僕は外に出た。
一樹は、まだ絶望から帰ってきていない。
1階まで一気に降りる。
階段の踊り場付近でかがんで向こうの様子をうかがう。
探していた人はすぐに見つかった。
それもすぐ近くに。
今まさに入ってこようとしていたところだった。
先に女性が二人入ってくる。
その後に入ってきた。
九重章、画像通りだ。
3人で何やら話している。
そして、数分が経つ。
動きがあった。
その先には資料室。
やっぱりか。
何かを調べるために。
資料室内部には、九重章と付き添いの女が入っていった。
そして、見張り役みたいな女が一人。
今ならいけるか?
そうだ、このタイミングしかない。
九重章本人に直接会って、この話を持ち出しても逆に警戒されそうだ。
その前に、あの女の人に事情を話してみよう。
「あの、、、。」
「?」
「いきなりで申し訳ないんですが、章さん本人ですか?あの人。」
「!」
「待って、待ってください!敵ではないです。」
「メールを送ったんですが、章さん本人に。」
「、、、、」
「何ですか?」
「、、、、」
「?」
「本人に聞いて。」
「でも、いきなり出ていって警戒されると嫌だったので、あなたが一人になるところで話しかけようとしました。」
「調査に来たんですよね。」
「、、、、はぁ。そうだよ。」
「協力します。」
「え?」
「こっちに来てください。」
「待って、中にまだ二人がいるんだけど。」
「こういう作戦です。」
「その二人にはあとで話します。来てくれないですか?」
必死に頼むその姿。
若葉は押しに弱い。
つまり、断るということが苦手なのである。
「分かった。」
「でも、ちょっと待って。」
「二人にメモ残していくから。」
「、、、、、、、よし、これでいいや。」
「ありがとうございます、行きましょう。」
別行動は不安だ。
だが、不思議とこの人なら大丈夫な感じがする。
これが嘘だとしても、私自身の首が閉まるだけで済む。
本当なら、内部に協力者ができることになる。
見返りの方が大きい。
だから、若葉はこっちを選んだ。
かなり展開が変わってきたと思います。ここからどうなるのか?次回もお楽しみに。読んでいただきありがとうございました。




