after_:World_Repeating/No.7_3
「…状況は? どうなってる」
「はっ。1班と2班、共に対象αとβを保護完了。我が部隊の損害はゼロとの事です」
「そうか。…3班は?」
「未だ、報告ありません」
「……」
複数の大人たちと話し込んでいた男は、話半ばで俯くと、考え込むように額に手を当てる。
そして、そんな男を訝しげな表情で見つめる2人の少年、少女。彼らもまた、言葉を交わしていた。
「ねえ、この人たち、誰なの?」
「さあ。保安部隊じゃない、のは確かだと思うけど」
「じゃあ…なんであんな武器を持ってるのよ?」
「さあ…」
化け物退治に走り去った男のうしろ、1人取り残された少年の耳に入ったのは、ある少女の声だった。
「…てゆうかあの人、綾音の知り合い?」
「違うわ。…爆発があったあと、変な化け物に襲われて。その時、助けて貰ったの。名前は…聞いたけど、教えてくれなかった」
「それで、”先生”って呼んでたんだ」
「…うん。…逢里こそ、知り合いじゃないの?」
「ううん、違う。僕もさっき、助けてもらった」
逢里と呼ばれた少年と、綾音と呼ばれた少女。2人が疑惑の目線を向ける先、男は会話に区切りが着いたのか、人だかりを抜け出し2人の元へ歩み寄ると、
「そうだお2人さん、ひとつ聞きたいことがあるんだが___」
そう言い、男は上着のポケットから取り出した古びた”手帳”を開いてみせる。
「この写真の男の子だ。…見覚えは無いか?」
男が指差したのは、そう古くはない写真に写し出された背広を着た男性の隣で、ピースサインをする黒い髪の少年の姿。それを数秒間見つめていた2人は、やがて口を開き__
「私は…見たことがないわ。逢里は、知ってる?」
「…知らないな、この子。おじさんの子ども?」
「バカ言っちゃいけねえよ。願い下げだこんなじゃじゃ馬」
「迷子を探してるなら警察に行ったら?」
「それが出来りゃ、苦労はしないんだがな…」
「…?」
2人の返答を聞き、男は深い溜息をつくと、
「つまらん事を聞いたな。ありがとよ」
そう言い、手帳を元あった場所に戻した男は、振り返ると集まった大人たちに指示を飛ばす。
「現刻を持って、コード815を発令。2人を連れてこの場を離脱しろ」
「はっ」
「えっ? 僕たちを連れてって…どこに行くんですか?」
「行きゃあ分かるさ。とにかく今は____」
その言葉の先が紡がれるよりも前。僅か前に___
「チッ…遅かったか…!」
「な…なに!? この揺れ…!?」
人間たちが立つ大地が、音を立てて振動する。まるで、何かに怯え、震えているかのように。
「3班からの報告はまだか!? 連絡を取れ!」
「は…はい!」
倒壊する建物が地面を揺らしているのだろうとも取れるが、それにしては、いかんせん揺れが長すぎる。
「おじさん、そもそもなんでこの建物は爆発なんてしたんですか? ここはこの辺りでも有名な廃墟で、人は住んでいないはずじゃ…」
少年が男の袖口を掴み、その顔を覗き込みながら問う。それに、目線を轟々と燃える瓦礫から離すこと無く。男は答える。
「…簡単な事だ。…ここが廃墟でも、無人でもない、 ……研究所だからだ」
「研究…所…?」
「……」
揺れ続ける大地の果てから、轟音___爆発音が聞こえる。それと同時に、男の傍でデバイスに耳を当てていた隊員の1人が、声を漏らす。
「なに…!? それは本当か!?」
「…どうした」
「………」
「おい、答えろ」
少しの間を置き。目を見開き、動揺を隠せない様子で、隊員は震える口を開き、男へ言う。
「…3班の連絡部隊から。…先遣隊、及び本隊……全滅したとの事です……」
「…………」
その言葉に、男の口元が僅かに引き締まるのを、少年は見逃さなかった。
coming soon…
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