after_:World_Repeating/No.7_2
紅蓮が包み込む、倒壊した施設の片隅に。その少年は、居た。
「何が…起きた…んだ…?」
巻き上げられた土埃の先に、紅く照らされた世界を望み。
じりじりと頬を焼く熱風に髪をなびかせ、少年は辺りを見渡す。
「誰か、いますか?」
するとその言葉に答えるように、崩れた瓦礫の隙間から、人影が現れる。…が。
「___ッ!」
それは、”人”だった。
……否、”形だけ”は、”人”だった。
全身のあらゆる所を炭化させ、醜く裂けた傷口から覗く内部の”色”は、明らかに、人間ものでは無く___
『アアアアアア_____!!!!』
「あああああっ……て、何!?」
ソフトボールが入るのでは!?と言わんばかりに開け放った口から、そんな叫びをあげ。
ヒトの形をした化け物は、少年に襲いかかる。
「えぇっ!? 何コレ!? パンデミック映画の撮影でもしてたんだっけ!? 僕!?」
そんな化け物から逃れるべく駆け出した少年だったが、その姿から目を離し、速力を上げるべく前を向いた___その時。
「……わっ!?」
ぼすっ、と音をたて、何かにぶつかる。…しかし、痛みは無い。
「……?」
感触は低反発枕のそれだが、少年が身体を離しても、ぶつかって凹んだ部分が修復されて戻ってくることは無く___
「うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」
顔を上げ、ぶつかった”モノ”の全身を目にした時。少年は、先の咆哮に負けずとも劣らない悲鳴をあげ、後ずさる。
(あのゲームの主人公…良くこんなのとドンパチやれるな……)
全身が悴んだように軋みをあげ、目の前に現れた化け物を見つめる。
「…ねえ、これ…映画のエキストラやらされてる訳じゃないよね…? もしそうなら___」
後退りながら、そんな事を冗談交じりに呟く少年に。化け物は、それを気にする様子もなく、一歩、また一歩と少年に近付く。
「あっそ。…そんなんじゃない、って顔してるよ。…まあ、それはそうと___」
額に脂汗を滲ませながらも、少年は”ソレ”を視界の先に捉え、僅かに笑みを零す。
「アレは人間___だよね…?」
『ォォォォ____!!!』
縋るように歩みを進める化け物の背後から、”ソレ”は駆け寄る。
足音を忍ばせる事も、気を消すような事もせず。猪突猛進、化け物を目掛け、突き進んでくる。
「おおおおッ____!!!」
化け物が”ソレ”に気付き、歩みを止めて後ろに振り返った時。
その身体は、真っ二つに切断されていた。
「おじさんは…人間、だよね?」
純白の刀身を持つ大剣を振り下ろしたまま、自身が斬り伏せた骸を哀れむように見つめてた”男”に。少年は、静かに語りかける。
「…勿論人間だ。…あと、おじさんって言うな」
「じゃあ髭ジジイって呼びます」
「お前な…初対面の人様に向かって___」
「じゃあおじさんって呼びますね」
「…クソっ。好きにしろよ」
助けてもらったくせに…とでも言いたげな男の視線に、全く臆することなく、言葉を返す少年。
その姿を見て、大きなため息を付いた男は続ける。
「…お前、随分と場馴れしてるな」
「そう…ですか?」
「ああ。…気持ち悪いぐらいに落ち着いてるって言うのか、なんて言うのか…」
「ま、冷静が一番って、いつも自分に言い聞かせてますからね」
「そうかよ…____ッ!!」
男は呆れ混じりに頷き、途端に息を呑む。
「…お前、ツイてねえが……ツイてるな」
「日本語、大丈夫ですか?」
「…お前、後でシメる」
男の身構えるたその先には、少年を襲った化け物と同じ、全身傷だらけの、ボロボロの白衣を纏った男__のような”化け物”。
「隊長!」
「おせえぞ! …2人の確保は完了した。次の準備に移れ!」
「はい!」
その化け物を視認すると同時に、背後から複数の人間達が走り寄ってくる。
その人間達の肩には、男の肩にある物と同じ__猛禽類を象った刺繍を中央に、翼と複数の輪を表現した紋章。
「おじさん、一体何者なんですか? 保安部隊?」
「…んなわけねえだろよ。あんな息のかかった連中、信頼出来るかよ」
「……?」
おじさんでいいんだ…と、苦笑いを浮かべる少年を他所に。
「大人しくしてろよ? お前の”友だち”は、必ず救ってやるからな」
「…友…だち…?」
男はそんな言葉を残し、化け物の元へかけて行くのであった。
coming soon…
お読み頂きありがとうございます。
次の更新もお楽しみに!
☆遅くなりまして申し訳ありませんでしたm(_ _)m