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時刻神さまの仰せのままに_”sidestorys”  作者: Mono―
”afterstorys”〜World_Repeating〜
1/4

after_:World_Repeating/No.7_1


西暦2308年、8月15日。



それは、1人の少女と、少年と、無名の男。そして、忘れられた”存在”が刻む。



全ての始まりを奏でる、afterstorys____


「いや……やめてっ…!」


『ああ……ああああ…!』



”ソレ”は、人間”だった”。



「嫌っ…!来ないで!」



縋るように伸ばされた”ソレ”の手を払い除け、震えて役に立たない両足を必死に動かし、何度も転びそうになりながらも、その場から逃げる。



「____ッ!!!」



しかし。逃げども逃げども、どこに行っても”ソレ”はいる。



「なんで……どうして…こんな……」



自身に迫る”ソレ”らは、出会うもの全てが醜かった。


形は人間だが____しかし、人間では無い。



『アアアアアアッ___!!!!』


「…っ!」



なぜなら。


一歩、また一歩と”ソレ”が近付く度に、嗅いだことのない強烈な臭気が鼻を突き、呼吸を妨げるからだ。その原因は、ひと目で分かるほど単純なものだが。



(身体が……焼ける…臭い…?)



”ソレ”の頭部に生えた髪はもちろんの事、加えて身体の左半分は焼け爛れ、頬と大腿は炭化した骨の一部が覗いている。



「あんな状態で生きていられるなんて……」


『アアアァァァァッ__!』



なりを見て後ずさる少女へ。断末魔の叫びとも取れる叫びで答え。”ソレ”は、首の骨の存在を疑うほどの不気味な角度で少女を睨み、次の瞬間、ゆっくりと歩を進め始める。



「あ……」



迫り来るモノの圧力に押され、少女は瓦礫の破片に足を取られる。



『アアアアアアアアアアア!!!!!』


「っ____!」



嘲笑と狂乱の混ざり合った不気味な声をあげ、”ソレ”があと1歩で手が届く距離にまで近付いた時。少女の中で、どこかの糸が切れる。



「来ないでって…言ってるのッ__!」



近くに転がっていたコンクリートの塊を、あらん限りの力で持ち上げ、”ソレ”の焼け焦げた胴を目掛けて振り下ろす。


鈍い音を立て”ソレ”の下腹部に叩き付けられた鈍器は、炭化した腹部に当たった瞬間、乾いた音を立てる。

慣性の赴くままに重力に引かれて行った重みは、離れると同時に少女の手のひらを裂き、そして、”ソレ”の身体に風穴を穿ち、背後の情景を透過する。



「____ッ!」



…だが。少女に驚きを与えたのは、手のひらを伝う痛みでも、いとも簡単に胴を貫通してしまった”ソレ”の姿でも無く。



「…たーく。今回は随分と数が多いな」



”ソレ”の後ろから、白い、真っ白な刀身を持つ大剣が振り下ろされ、無慈悲に”ソレ”を上と下に分ける。



『アアアアアァァァァァ…ァ……___』


「あ……」



湿った水音を立て転がった”ソレ”を見下ろしながら、背後から現れた男が、落ち着いた物腰で言う。



「…コイツ相手に石ころで応戦するやつ、初めて見たぜ」


「あなた…は…?」


「んな怖い顔しなくたって…とって食ったりしねえよ。…おい、早く楽になれよ」



半身になっても尚蠢く”ソレ”が少女に向かって伸ばそうとする腕を、かさりと枯葉をふむような音を立て踏み潰し。呟きながら、男は続け様にその頭部に大剣を押し付け、完全に粉砕する。



「俺は…まあ、名乗るほどのもんじゃねえよ。…”先生”とでも読んでくれよ」


「先…生……?」


「………話は後だ。死にたくなきゃ、ついてこい」


「……」




紅蓮が支配する、とある研究所の跡地で。


明るい栗色に、僅かな紅を混ぜたかのような__黄昏が栄える長い髪を、炎の巻き上げる風になびかせながら。


少女と男は、次なる時へ向け、歴史トキを刻むのであった。








coming soon…


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